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2心も体も縛り付けて

 平太はそのまま人気の全然ないところまで引っ張って来ると、そこにあったトイレの個室に俺を引っ張り込んだ。  何をされるのかとどきどきしていると、平太は俺の顔の横の壁に手をついた。 「真空さん、浴衣脱いでください」  平太は口元を僅かに吊り上げた。そんな顔をされては、逆らえるはずもない。  じっとり汗ばんだ手で浴衣の帯を解き、脱いでしまってから便座のフタの上にそれを置いた。平太が俺の髪をくしけずるように頭を撫でながら「いい子ですね」と囁く。さらに顔が熱くなった。 「本当はこれ、花火を見た後ホテルとかで使おうと思ってたんですけど」言いながら平太は、あるものを取り出した。「もっといい使い方、思い付きました」  平太が取り出したものを見て、痺れが全身を走った。後ろがヒクつくのが止まらない。  平太が取り出したものは、真っ赤な麻縄だった。平太はそれをまるで鞭のように手に持つと、微笑んだ。冷たい視線が俺を射る。 「あはぁ……」  その姿を見ただけで、思わずため息のような嬌声が漏れてしまった。全身がジンジン疼き、いやらしい妄想と期待で頭が一杯になってしまう。 「今縛ってあげますから、じっとしていてください」  平太は静かにそう命じる。俺は頷いた。  平太は手際よく縄を俺の全身に縛り付けた。動くのに不便はないが、動けば更に縄が食い込む、それくらいのきつさだった。見下ろすと、縄が自分の体に食い込んでいるのがよく見えて、なおさら興奮してしまう。  肉棒の根元までも一緒に縛られてしまったため、パンパンに膨らんだソレからは欲望を吐き出すことができなかった。  平太は俺の姿を全身じっと観察するように眺めると「浴衣、着てください」と俺に浴衣を投げ渡した。着ると、平太は満足げに微笑んだ。 「やっぱり、浴衣を着ちゃうと緊縛してるのが見えないですね」  それから平太は微笑んだまま、こう言った。 「ここで、その状態のままならご奉仕していいですよ」  平太の顔はご主人様の顔だった。そんな顔をされたら、断れる訳がない。  俺はしゃがんで床に膝をついて、おずおずと平太の肉棒を取り出して、咥えた。動くときつく縄が締め付けてきて、痛みと被虐感に堪らず「んっ……」と背筋を震わせた。 「ふうぅ、ん……おいひい……んんっ……はふ、ぅぅ……」  いつ他人が来るか分からない。だから声を上げてはいけないと分かっているのに、自然と声を上げてしまう。  こちらが奉仕している側で自分のモノには一切手を触れていないはずなのに、ゾクゾクと走る快感が止まらない。口内に擦れる感覚にすら腰を蕩けさせられてしまい、平太の太くて大きいソレに口内を犯されているような感覚になる。  口の中すらも性感帯になってしまったようだ。気持ちよくて、動きを止められない。  さすがに前までは、口の中は性感帯ではなかったはずだ。性感帯になるまで平太に仕込まれたのだ――なんて思うと、余計興奮してしまった。  悪戯に俺の髪を弄りながらしゃぶらせていた平太だったが、しばらくして、蔑むように呟いた。 「みっともなく喘いじゃって、うるさいですね。ここがどこだか分かってます?」  そのまま平太は、俺の後頭部を掴んで、奥へと押し込んだ。被支配欲と背徳感と酸欠とで、くらくらする。  それを見た平太は、あはっと笑った。恐る恐る見上げると、ぞっとするほどの嗜虐欲を灯らせた、だけど凍てつくように冷たい瞳で、平太が見つめていた。氷の針のような快感が一気に俺を襲い、理性が一気に吹っ飛んだ。

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