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4心も体も縛り付けて
藍色の空に色鮮やかな花が咲く。平太はその花火を見て「綺麗ですね」なんて俺に笑いかけた。――俺がそれどころではないのを重々承知の上で。
あの後平太は俺の尻にローターを仕込んで、それを稼働させながらその状態のまま、花火の見えるここまで歩かせたのだ。当然、今の俺には返事をする余裕なんてなかった。
「ん……んぅ……ぅ」
口元を必死に抑えながら、俺は何とか頷いた。焦らすように動く刺激は、溜まった熱を煽るようで、もどかしくて堪らなかった。
あまり人気のない穴場的な場所に腰を下ろして見ていたからか、平太は振動数を上げたり、かと思うといきなり止めたり、と容赦なくローターを操った。
体を走る快感が止まらない。興奮すればするほど、縛られた陰茎が膨らんで、さらに痛みが増した。体が疼いて仕方がない。こんな場所で、浴衣の下は緊縛されているなんて思うと、それも興奮した。
「……どうしたんですか真空さん、何か答えてくださいよ」
「んんっ! ……んーっ……んんっ……」
平太が不思議そうな表情を浮かべてみせ、いきなり一気に振動数を上げた。意図せず体が跳ねる。
平太の口元がつり上がる。その笑顔を見て、胸が苦しくなった。
「……あれ、平太?」
ふと、背後から声がする。平太が振り向くが、動いたら声が出てしまいそうで俺は動けなかった。
平太は振り向いた後、何を思ったか、ローターの振動を止めた。ようやく息をつけるようになり、俺はほっとして後ろを振り向いた。そこには、いかにも遊び慣れていそうな格好の赤髪の男が立っていた。
「アカじゃん、この間ぶり。どしたのお前、あいつらと花火来た訳?」
平太が親しげに愛想よく話しかける。知り合いだろうか。
「や、今日は高校のやつと。つーかさ、お前その人……」
彼はにやっと笑いながら、平太の隣に座って平太越しに俺を見た。
「その人が、この前言ってた先輩?」
「そうそう、恋人。かっこいいだろ?」
平太に何気なくそう言われたことに、思わず心臓が高鳴る。
平太はふと俺の顔を見て、ふっと笑った。口元が無言で『分かりやす』と動いた。恥ずかしくなる。
そして、彼と平太が世間話のようなものを始めた。かと思うと――突然下半身に快感が走る。またローターが動き出した。
「んっ……」と声が漏れてしまい、慌ててまた口を塞いだ。冷や汗が頬を伝う。
彼が一瞬、怪訝そうな顔で俺を見た。『どうしよう』という言葉ばかり頭を巡る。しかし、その焦りすらも打ち消すくらいの気持ち良さが俺を苛んだ。
二人はまた会話を再開した。そしてその隣にいる俺は、花火を見るでもなく、ローターから与えられる快感を必死に耐えることしかできなかった。
もしバレてしまったら、という背徳感が高まって、普段よりさらに感度が良くなってしまっているようだ。振動はそこまで強くないはずなのに、どんなに堪えても体が震えてしまい、息が荒くなってしまう。
そのうち、すぐ隣に他人がいるというのに、頭の中が淫らなことでいっぱいになってしまった。平太のが欲しくて堪らない。
「なあ、お前の恋人、具合悪いんじゃねえの」
やがて、彼がそう言う。冷や汗がどっと出る。
平太はそれを聞いて、何事もないかのように答えた。
「あー……確かにそういえば、ちょっと気持ち悪いかも、なんてこと言ってた気がする」
そして平太は「真空さん、大丈夫ですか」と問いかけた。俺が顔を上げたその時、突然さらにローターの振動数が上がった。
「……っ、ぅ、ぅんっ……」
高い声が僅かに漏れてしまい、ゾワゾワッと快感が全身に広がる。危機感すらも快感に変わってしまい、体が疼いて堪らない。
彼は怪訝そうな顔から一転、何かを理解したかのような顔になると、立ち上がった。
「俺……用事思い出したから行くわ」
彼はそして、そそくさと去って行ってしまった。平太はそれを見て苦笑すると、俺の耳に口を近付けて、囁いた。
「今の喘ぎ声で完璧バレましたね。今の、俺の中学の時の友達だったんですけど、状況をなんとなく察したから帰ったんだと思いますよ」
顔が一気に熱くなるのを感じる。恥ずかしくて、どこか穴に入って埋まってしまいたい。だけどその恥ずかしさすらも、快感に変わってしまった。
平太は口を俺の耳に近付けたまま、鼻で笑った。
「今の状況で気持ちよくなるなんて、本当に淫乱だな、堪え性のない雌犬が」
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