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9心も体も縛り付けて

「……おはようございます」  目を開けると、そのすぐ目の前には平太の顔があった。頭がよく回らないせいか、今がどういう状況なのか全く把握できない。  少しして、自分はベッドの上に寝ていることに気付いた。何度か瞬きをして、昨日のことを思い出そうとしながら呟いた。 「あれ、ここ……?」 「もしかして真空さん、寝ぼけてます?」平太は苦笑した。「昨日、花火を見に行ったじゃないですか。それで、そこからここに向かって」 「……あ」  昨夜のことを思い出して、一気に恥ずかしさが込み上げてきた。 「可愛かったですよ」  平太はそんな俺を見てくすりと笑った。そんなことを言われてはなおさら恥ずかしくなってしまって、俺は誤魔化すように問いかけた。 「今、何時だ」  平太に誤魔化そうとしたのがばれてしまったみたいで、平太は笑いながら言った。 「今が……多分九時ちょっと過ぎです」 「……嘘!」  慌てて飛び起きようとすると、全身が痛んで顔をしかめた。 「どうしました?」 「全身がすごく痛む……」  平太はそれを聞いて、申し訳なさそうな顔になった。 「さすがにやり過ぎましたよね。……俺も昨日は、気持ち良過ぎておかしくなってました」  それを聞いて思い出したが、平太はあの後、敬語が抜けたまま休憩もなしに何度もしてきたのだ。  さすがに快感が強過ぎて怖くて、何度も『もう無理だ』と懇願したのだが、平太は聞き入れる様子は一切見せなかった。それどころか、『犬は犬らしくご主人様に逆らわず大人しく犯されてろ』と言うばかり。  俺の記憶は途中でぷっつり切れている。恐らく、俺が失神するまでしていたのだろう。 「平太、かなり絶倫だよな」 「……すみません。自覚はあるのでいつもはセーブしてるんですけど、昨日はセーブが効かなくて」  苦い顔になって平太は謝った。 「……あれでセーブしてたのか」  いつものでも俺はかなり精一杯だったのだが、平太はそれでも解消し切れないままだったのだろうか。だとすれば……だとしても、いつも昨日ぐらいのことをするのはさすがに体がもたない。 「一応」と頷いた平太に、俺は思わず苦笑を漏らした。 「でも、真空さんが可愛過ぎるのもいけないんですよ?」  悪戯っぽく笑って平太は言う。その言葉に頰が一気に熱くなってしまう。 「ほら、そういうところ」平太は俺の前髪を軽く上げると、そこにキスを落とした。「そういうところが可愛いんです」  あまりに自然な流れでスマートにキスをするものだから、俺の胸は高鳴った。どうして平太は、こんなにかっこいいんだろう。  平太はそれから、軽く俺を抱き締めて、言った。 「真空さん、そういう顔俺以外に見せないでくださいよ? って、無自覚だからどうしようもないのか。でも、他の人に対してそういう風に照れないでください」  そして、つつっと腰の辺りを撫ぜた。 「真空さんの体は、もう俺なしじゃいられないですよね? 俺以外になびいちゃ駄目ですからね」  柔らかい表情とは裏腹に、独占欲が滲む声色だった。多分それは、本人も気付いていない。  そんな風に独占欲を滲ませてくれたのが嬉しくて、俺は何度も頷いた。 「分かってる」

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