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4あの頃から変われないまま

 真空がそんな僕の気持ちに気付いているのは知っていた。知っていてなお一緒にいてくれたから、真空も同じ気持ちなんだと思っていた。  ――思っていた、のに。  真空は、高二に進級して数週間経った辺りから、おかしくなり出した。  いつも真剣に聞いていた授業中も時々上の空で、僕と話していても時々物思いに耽っているようだった。そして僕がどうしたのか尋ねるとその度に、取り乱したように「何でもない」と答えていた。  いつも超然とした態度をとる真空とは別人みたいだった。  それが何でなのか疑問だったが、真空の視線を追っていたら、自然と気付いてしまった。真空の視線はいつでも、とある男子生徒に寄せられていたのだ。  長い前髪で目元が隠れていて、真面目そうな眼鏡をかけていて、制服をきっちり着込んでいて……その生徒は、ともすれば見逃してしまいそうなほどに地味で目立たない外見だった。  いてもいなくてもさほど変わりがなさそうな真面目君をどうして真空が見つめているのか分からなくて、だけど僕以外にそこまで関心を寄せるのが気に食わなかった。  だから、使えるもの全て使って必死に彼について調べた。そうしたら何か分かると思った。だけど、部活や成績や交友関係など、どこをとっても特に変わったものがなく、なおさら分からなくなった。  それに、特に真空と関わりはなさそうなのだ。だからどうして真空が気にしているのか、訳がわからなかった。  そんな時ふと、彼――明塚君と生徒会長の館野君が突然やけに親しくなり出したという話を聞いた。  チャンスだと思った。このまま仲良くなってくっついてしまえば、真空も興味をなくすかもしれない。  だから僕は、風紀委員の皆に「明塚君と館野君は付き合っているんだ」という噂を流してもらうよう頼んだ。その効果はすぐに現れた。  噂はすぐに広がって、それに伴って心なしか、明塚君と館野君の距離は縮まったように思えた。それだけではない。明塚君は目元を隠していた前髪を切って、眼鏡を外した。  それで少し、真空が彼を機にする理由が分かった気がした。彼の前髪と眼鏡の下の顔は、かなり整っていたのだ。  だけど、素顔が整っているからって気になるものなのか――分からなかった。でも、これで大丈夫だと思っていたのに、真空は依然彼のことを気にしたまま。  噂が広がれば広がるほど、真空は心なしか落ち込んでいった。なぜ真空が落ち込むのか、その訳の分からなさと苛立ちでもやもやした気持ちは、どんどん膨らんでいった。

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