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2気遣いの空回り
『いきなり三本も入るなんて、淫乱ですね』
多分平太なら、そう俺を嘲笑うだろう。嗜虐的な冷たい声で、容赦なく前立腺を弄りながら。
「はっ……あ、ひっ……んんぁ……」
そんなことを考えたら、快感で甘い声が漏れてしまった。だけどやっぱり足りない。自分の指なんかじゃもの足りない。もっと太いもの、平太のが欲しい。
「はぁん……あ、あぁ、欲しいぃ……あふ……平太ぁ……ん」
気付いたら吐息交じりにそんなことを呟いてしまっていた。
いつの間に自分はこんなに淫乱になっていたのか。今まで一人の時に欲しいなんて呟くことはなかったし、ましてや名前を呼んでしまうなんてなかった。
挿れて欲しくて堪らない。平太に好きに弄ばれたい――これじゃ、本当に平太の女だ。そう考えてしまって、余計に恥ずかしくなった。
いくら慰めても足りない。今までは足りないなりに誤魔化して何とかしてきたが、もう我慢が効かない。
気付けば俺は、熱に浮かされるように平太に電話をかけてしまっていた。
『もしもし、どうしました?』
平太の怪訝そうな声が聞こえる。
かけてしまってからようやく、後悔した。
「悪い……声、聞きたくて……」
歯切れ悪く言い訳してから、俺は電話を切ろうとした。『そうですか』と平太の納得するような声が聞こえてほっとしたが、平太はそれでは終わらなかった。
『――本当にそれだけですか?』
もしかして電話をした理由がバレたのか。不安と焦りが混ざって何とも言えない気持ちになる。だがそれと同時に、ヒクンと下の穴が疼く。
「それだけ、って?」
『おかしいと思ったんですよね、今日帰る直前の様子。普段は自分からあんなこと、言いませんよね? ……何が言いたいかは分かりますよね?』
この反応はバレている。そう思うと興奮してしまって、ヒクヒクッと穴が収縮したのが自分でも分かった。
「ごめん、なさい……ただ声が、聞きたかっただけじゃ、なくて……ずっと何も、なかったから、我慢できなくてっ……自分で、慰めてたら、どうしても足りなくて……平太が欲しくて……つい」
平太はしばらく電話の向こうで黙った。疑問に思っていると、平太はやがてくすりと笑いをこぼした。
『自分の指とかじゃ、足りないんですか?』
恥ずかしいことを言わせたいのか、平太はそうわざとらしく尋ねてくる。そのいたぶるような声の調子に、ゾワッと快感が走る。
「全然、足りないっ……平太の――いや、ご主人様の太いおちんぽ、欲しい……奥を突いて、欲しいですぅ……もう、無理ぃ……」
『じゃあ今は、そういうことを想像して自分で弄ってたんですか?』
「んはぁ……そうです……でもそしたら余計、ご主人様の、欲しくなっちゃって……」
蔑むような声色で問われて、快感が電話をあてている耳から全身に、さざ波のように広がった。思わず甘い吐息が漏れてしまう。
不意に平太は『ふはっ』と笑った。それから、面白いことを思いついた、という調子で俺にこう言った。
『――真空さん、今から俺の言う通りにしてください』
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