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4気遣いの空回り
『ははっ……じゃあそのまま……どっちの手も動かして』
言われるままに手を動かした。両方に刺激がいっているせいか命令に従っているという状況のせいか、快感に体が震えるのが止まらない。
「んあっ、あぁ……はぁっ、っあ……ああぁ、んんっ……イ、キそ……」
射精欲がどんどんと高まる。しばらくずっと自分一人で慰めるだけだったからか、平太の命令に従うのが、興奮と快感を煽っていく。体を走るゾクゾクとした感覚が止まらない。
しかし平太は『まだですよ』と笑い交じりに制止した。
「やっ、無理ですっ……イッちゃ、無理ぃ、イッちゃうっ……あぁんんっ――」
『手、止めてください』
平太の残酷な命令が下る。逆らう訳にはいかなくて、俺は手を止めた。
「はぁ……はあぁ……」
もう少しでイケた体がもどかしげに疼く。快感が欲しい、ただそれだけで頭がいっぱいになった。
俺の震える吐息を聞いたのか、平太は鼻で笑った。
『犬の、分際で……ご主人様より先に、イこうとするなんて……感心しませんね』
「はぁんっ……駄目な犬で、すみませんん……」
吐息混じりの冷徹な声が耳元でする。その声を聞いたら、鼻にかかったような声が漏れてしまった。
電話の向こうで平太が『ははっ』と冷笑した。その笑い声の響きにもゾクゾクする。
「ごしゅじ、さまぁ……イカせてくださいぃ……無理ぃっ……我慢、できないですぅ……」
全身がもどかしく疼いて堪らない。そう懇願すると、平太はこう問いかけた。
『後で、何でもする、と……約束できます?』
平太の声はゾクッとするほどに艶っぽい、掠れた甘い囁き声だった。
「しますぅ……何でもっ……しますからぁ」
自分の声が、恥ずかしいほどに情けなく聞こえる。そう言わされていることにも快感が走った。
平太がふふっと俺を嘲笑う。その笑い声のあまりにも嗜虐的な響きに、背筋が震えて「は、あぁ……」と喘ぎ声が漏れてしまう。
『仕方ないですね……どうぞ』
「あ、ありがとう、ございます……」
そう言ってから、体を触り始めた。もう散々触って焦らされて言葉責めされたせいか、すぐにイキそうになった。
「あ、ああっあ、んんっ……あんんっ、もうぅ……イッちゃい、ますぅっ……や、あぁん、イッちゃうっ……イッちゃ、ああぁっ……」
体をビクビクと震わせながら、そう高い声を上げてしまう。平太はそれを聞いて、満足気な笑いを零した。
『あはははっ……アンアンうるさいですね……犬以下だよ、お前は』
蔑むように低く囁く平太。ゾクゾクッと快感が体を抜ける。その強い快感のせいか、頭の中が一瞬真っ白になる。気付けば達してしまっていた。
「あ、っああぁんっ――!」
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