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6気遣いの空回り

「スマホか……ぱっと見、見当たらないな。よく探さないと見つからないかもしれないな」  真空さんは教室をぐるりと見回すと、窓際の方まで歩いていった。窓際の席から探すような仕草を見せた真空さんを、俺は壁ドンして、唇を重ねた。  驚いたのか、最初こそ離れようと俺を押したが、やがて真空さんは俺の肩に手を回して身を委ねた。唇を離すと、真っ赤な顔で真空さんは尋ねた。 「何でいきなり……スマホは」 「そんなの嘘ですよ。だってほら、ここにありますし」  リュックの中からそれを取り出して言うと、真空さんはなおさら怪訝そうな顔になった。 「じゃあどうして、そんな嘘」言いかけた真空さんの唇を人差し指で塞いで、微笑んだ。 「忘れました? 昨日自分が『後で何でもする』って約束したのを」  真空さんは驚いたように目を見開き、やがてすっと視線を俺から逸らし耳まで赤くした。 「誰がいつ視線を逸らしていいって言いました?」  微笑んだまま問いかけると、真空さんは少し体を震わせ、それからすぐに俺と視線を合わせて「すみません」と謝った。その瞳は蕩けていた。 「一回やってみたかったんですよね、教室で」  真空さんが期待に熱く蕩けた瞳を俺に向ける。既に下腹部は服の上から分かるほどに大きくなっていた。  俺はそんな真空さんを笑い飛ばして、こう問いかけた。 「ここ、真空さんが普段過ごしてる教室ですよね。真空さんの席ってどこですか?」  真空さんは俺がいる席のすぐ近くの、窓際の後ろから二番目の席を指差した。俺は、その席とその前の席のスペースを確保し、それから真空さんのネクタイを解いて紐の代わりとしてそれで手首を縛った。真空さんは最初、怪訝そうな顔をしていたが、縛られると、期待するような目で俺を見た。  その後、その席の机の上に腰掛けて足を広げ、下着まで下ろしてから微笑んだ。 「じゃあまず、ここでご奉仕してください」  真空さんは一瞬だけ躊躇うような仕草を見せたが、すぐに膝をついた。 「はあぁ……んっ」  間近で俺の陰茎を見ると、真空さんは恍惚とした表情を浮かべた。相変わらず真空さんは淫乱だ。そんな顔を見せられたら、こちらも我慢が効かなくなる。  俺は、さすがに今の真空さんにセックスを要求するのは酷だと思ったからあえて何もしなかった。  なんせ真空さんは、体育祭で短、長距離走両方に出る上に選抜リレーも出て、舞台祭では主役を張り、なのに文化祭の準備は極力全て手伝っていたのだ。そんなに忙しくては、さすがに心身ともに余裕がないだろう、だから要求するのは気遣いに欠ける、と思っていた。  だが、それとこれは話が別だったようだ。  いくら忙しくても溜まるものは溜まるようで、しかも夏休み中はやり過ぎなくらいにしていたのだ。今考えれば確かに辛かったかもしれない。それに、俺自身も辛かった。  真空さんのためにはむしろ、忙しいからといって触るのを控えるよりは、適度に苛めてやった方がいいのだろう。今回のことでそう学んだ。 「し、失礼、します……」  真空さんの上ずった声がする。そして真空さんはおもむろに口を付け、ねっとりと舐め上げた。 「……っ、やべ」  真空さんにご奉仕させるのが久しぶりだからだろうか、いつも以上に気持ち良い。真空さんの顔も、いつも以上に官能的に見える。……これは、頑張らないとわりかしすぐにイッてしまうかもしれない。 「はふ、んっ……ふう、ぅんん……」  真空さんもいつも以上に気持ち良いのか、ご奉仕しているだけだというのにビクビクと体を震わせた。ピチャ、と響く水音が、欲情した気持ちをさらに煽る。 「ひもちいい、れふか……?」  咥えたまま、潤んだ瞳で俺を上目遣いに見る真空さん。ゾクンッ、と痺れるような快感が走る。 「はい、気持ち良いですよ。でもまだ、少し足りないですね」  言いながら、後頭部を掴んで無理やり奥に押し込むと、「んんんぅっ……」と真空さんは一際大きく体を震わせた。その瞳は快感でどろどろに溶けていた。 「真空さん、無理やり突っ込まれて感じちゃったんですか? っはは、やっぱりいんら――」  やっぱり淫乱ですね、そう言おうとしたその時、不意に予想外のことが起きた。

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