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7気遣いの空回り
「あ、えっと……」
今はもうほとんど夜で、うちのクラスの劇練が最後だった。そして全員が解散し始めた頃に俺と真空さんはこの教室に来た。だから――まさか、誰かがこの教室に入ってくるなんて思ってもみなかった。
教室のドアを躊躇いもなく開けた彼は、両耳にイヤホンをしていたせいで俺と真空さんが教室の中にいることに気が付かなかったのだろう。よりにもよってそこにいたのは、俺と同じクラスで一緒に劇に出る、名元だった。
何とか言い逃れができないか、そう今の状況を確認したが、到底無理だった。俺が机の上に座りその前に手を縛った真空さんを跪かせ、なおかつ真空さんの後頭部を掴んで性器を咥えさせているのだから。
「……その、わ、忘れ物、取りに、あの……ごめん、僕は何も見てないから。す、すぐ出てくから――」
「待った」
ぽかんとした顔でしばらく俺と真空さんを見つめると、我に返ったような表情になり、名元は慌てて教室を出て行こうとした。そんな名元を俺は引き止めた。
名元は体を強張らせ、恐る恐る振り向いた。その後、視線を彷徨わせて迷うように呟いた。
「誰にも言わないしその……二人にこういう趣味があることはもちろん誰にも言わないから」
「責任とってくれよ」
俺は真空さんの後頭部を掴んでいた手を離し、名元にそう微笑んでみせた。真空さんは俺の性器から口を離し、戸惑うように俺と名元を見比べた。
名元は俺の顔を見て、顔を引きつらせた。
「ええと……責任とれって……?」
「だから、これ知っちゃったんだから責任とれよって話」
名元は途端に顔を青ざめさせた。何を想像したのだろうか。
「そんな、ぼ、僕なんかと、そういうことしても多分全然楽しくないし、それに僕そういう経験ないし……」
慌てた様子の名元を見て、どう勘違いしたのか察した。あえてその誤解を解かずにからかってやろうと思って、俺は肩をすくめた。
「分かんねえじゃん? そんなもんやってみないとさ」
名元の怯えたような表情は面白いほどに予想通りだったが、思ったよりも真空さんが不安げな顔で俺を見上げてくるので、俺はすぐに訂正した。
「嘘だよ、やって欲しいのはそういうことじゃねえ。第一俺、この人一筋だし」
ね、真空さん、と微笑むと、真空さんはさっと顔を赤くした。
そういう言葉はいつも言っているはずなのに、いつまでも慣れずに初心な反応をする真空さんは、本当に可愛い。この人は俺を何度惚れ直させれば気がすむのだろう、そう言いたくなるほど。
「じゃあ、どういう……?」
「扉閉めて、そこで立って見ててくれればいい――いや待て、もう一個お願いしようかな」
俺は言いながらズボンのチャックを上げて机から飛び降りた。そしてスマホを出してカメラを起動し、すぐに動画が撮影できるような状態にして、名元に渡した。
「これで撮りながらそこに立っててくれればいいから。見たくなきゃ別に目瞑っててもいいし。ただし、勝手に帰るなよ」
「撮るって、何を」と問いかけた名元に「この流れで分かるだろ?」と答え、俺は元の位置に戻った。
真空さんは今の問答で察したのか、顔を赤くしたまま下半身をもじもじとさせた。
「もう興奮してるんですか? 変態ですね」
「んっ……」
耳元で嘲笑うように囁くと、真空さんは体を少し震わせた。
「じゃ、よろしく」
「ま、待って、僕こんなの――」
必死に断ろうとした名元の言葉を遮って、俺はわざとらしく問いかけた。
「いいんだ? 俺と真空さんを一気に敵に回しちゃって」
二の句が継げなくなった名元を確認してから、俺はズボンのチャックを下ろし直した。そして、やれと真空さんに命令するように、膝を叩いてみせた。
真空さんはそれでも少し躊躇うように俺と名元を見比べていたが「真空さん」と呼びかけると、真空さんは恐る恐る俺のモノを咥えにいった。
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