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3今日は晴天

 そう勢いよく放送部が言い切ると、「位置について、用意」という冷静なアナウンスが聞こえ始めた。そしてピストルの音が聞こえると、全員が一気に走り出した。俺はそのレースに目を奪われてしまった。  他の生徒もさすがに速い。だけど真空さんは、そのさらに一歩先を行っていた。流れるようなフォームに風を切ってなびく髪、それに見入っていると気付けば真空さんが一着でゴールしていた。  その数瞬後に陸上部の部長がゴールし、それに相次いで他の生徒がゴールしていった。  真空さんは運動部の中でもさらに優れた生徒の中で一番をもぎ取ったどころか、息一つ切らさずに涼しげな顔で立っていた。真空さん自身は帰宅部にも関わらず、だ。 「一着は去年同様、第六レーンの前園真空でした! では、ここで前園くんにインタビューをしてみたいと思います……前園くん、見事一着になれた感想をお願いします!」  放送部が真空さんの元へ駆けていき、マイクを差し出した。真空さんは顔色一つ変えず、服の裾で汗を拭ってから答えた。 「そうだな……四組の勝利に貢献できて嬉しい」  裾で汗を拭う時にちらっと見えた引き締まった腹に、少しどぎまぎした。いつも飽きるほどに見ているが、それとは違った意味で――かっこよくて、どぎまぎした。それと、答えているときの顔も、はっとするほどに整っていてかっこよかった。  これじゃ、憧れる生徒が多いのも当たり前だ。俺だってもしかしたら、あんな出会い方をしなければ真空さんに憧れていたかもしれない。改めて、俺はとんでもない人を組み敷いて服従させているんだと思い知った。  しかしその超然とした態度は放送部の「では、この勝利を一番に褒めてもらいたいのは!」という問いで崩れた。  さっきまでは何にも心を動かされないような無表情だったのに、急に迷うように視線をあちこちにやり出した。何かを言うのを躊躇っている様子がしばらく続いた。  どうしたのかと疑問に思って見ていると、真空さんはまるで照れを隠すように首元に手をやり、放送部から目を逸らしてぼそっと答えた。 「……平太」  言いようのない恥ずかしいような嬉しいような幸せなような、そんな気持ちが込み上げてきた。俺は思わず口元を押さえた。 「反則だっての……!」  クールでかっこいい姿を散々見せられた後に、不意打ちでいつもの可愛い真空さんが来ると、いつもの何割か増しで萌えてしまう。この人は本当に、何も計算していないのにグッとくるような可愛い行動ばかり取る。  生徒席がざわっとする。恐らくあんな真空さんが意外なんだろう。  放送部はそれを聞いて、にこにことした顔でうんうんと頷いた。 「期待通りの返答をありがとうございます! 前園くんと明塚くんは個人的な応援したいカップルランキング第一位なので、ぜひとも末長く続いていただきたいですね。……さて、前園くんの大変貴重なデレをいただいたところで、次の競技の説明に入りたいと思います!」

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