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7才能の使い道

「――終わりましたね、舞台祭」  平太がそう呟く。俺は頷いて、さっきまでの出来事を思い出した。  俺たちのクラスが一番最後で、俺たちが終わるとすぐに閉会式に入ったのだ。そして例年通り、どのクラスが一番だったか、優秀賞と最優秀賞を発表し、続いて生徒個人に送られる優秀演技賞と最優秀演技賞を発表した。  体育祭の得点にプラスされるものなので、どのクラスも最優秀賞を狙っていた。体育祭の順位は、六クラス中五組が一番で続いて四組、このクラスが二番目だった。  優秀賞は一組、伊織のクラスのロミオとジュリエットだった。そして最優秀賞は、四組のハムレットだった。  優秀演技賞は、二年三組の演劇部の生徒がもらっていた。クラス全体で賞はもらえなかったものの、一人だけずば抜けて上手い演技だったのだ。彼は一躍人気者になるだろう。  そして最優秀演技賞は――平太だった。 『は!? 俺!?』  その時、一年四組の席で、裏返った声で聞き返しながら慌てて立ち上がる平太が見えた。自分が選ばれるなんて夢にも思っていなかったような反応だ。平太の声を聞いて、一年四組の生徒が笑いに沸いた。 『舞台に行ってこいよ平太、いや、レアティーズ様?』  平太の友達らしき彼が面白がるように言うと、さらに笑いが起きた。 『おま、ふざけんな後で覚えてろよ』  平太は傍らの彼を小突くと、少し恥ずかしそうな小走りで舞台まで行った。 『見事最優秀演技賞を獲得した明塚くん、今のお気持ちは?』  賞状を受け取った後、放送部の生徒にそう尋ねられた平太。平太は、困ったように後頭部を掻くと、『ええと』と話し出した。 『まさか自分がこんな賞をもらえるなんて全く思ってなかったので、コメントとか全然考えてないんですけど……俺がまぐれでこの賞をもらえたのは、一緒に舞台に立った前園先輩、滝瀬、樋本、名元、その他多くの生徒と、それから今まで練習を指導してくれた各学年の学級委員長のおかげだと思います。ありがとうございました』  無難に言うと、少し語気を強めて続けた。 『この賞をもらえたのは本当に嬉しいんですけど、来年は何の役もやらずに小道具係をやりたいので、よろしくお願いします!』  そして頭を下げると、席はわっと沸いた。平太らしい締め方だった。 「――そうだな。何だか、気付いたら終わっていた気がする」  確かに、そう平太は頷くと、笑った。 「終わってみれば、舞台祭、楽しかったですよね。本番中、真空さんが台詞を忘れるハプニングも上手く切り抜けられましたし」  しかしその後すぐに平太は付け加えた。 「来年は何の役もやりたくないですけどね」 「平太は多分、来年は主役を当てられると思うぞ。俺は去年、準主役で最優秀演技賞をとったら今年、主役に抜擢された」  途端に平太の顔が引きつった。それを見て、俺は思わず笑ってしまった。  そんな会話をしながら俺は、劇の出演者の写真撮影の順番待ちをしていた。劇をやった順に写真を撮るらしく、俺たち四組は一番最後だった。  劇が終わってしまったのですっかり気が抜けて、だらだらと平太と話していた。が、思わぬ出来事が起こった。  スーツを着た男の人が、写真撮影をする生徒から少し離れて控えていた教師に話しかけ、ちらちらと生徒を見ていた。  舞台祭は一般客も観劇可能で、だから誰かの保護者だろうとあたりをつけてぼうっと見ていたのだが――不意に彼は俺と平太の方を指差した。教師が頷くと、彼はこちらに歩み寄ってきた。 「知り合いですか、真空さんの」  平太も同じことを不審に思ったらしく、そう尋ねてきた。 「え? 平太の知り合いじゃないのか」  彼はどちらの知り合いでもない。しかし彼は明らかにこちらに来ている。訳が分からなくて、俺と平太は顔を見合わせた。その様子を見た生徒がざわめき出した。状況が掴めなくて不安になる。  彼はやがて、俺と平太の前に立つと、平太を見、こう尋ねた。 「ええと……ハムレットの劇でレアティーズを演じてたのは、君で合ってますか?」

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