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6王子様と執事
「真空さん、俺、してみたいことがあるんですけど」
真空さんが扉を閉めたのを確認して、俺は微笑んだ。真空さんが、何だ、と首をかしげたのを見て、俺は続けた。
「イメージプレイ、です。……ちょうどいいでしょう? 真空さんは今執事の格好をしてて、俺は今王子の格好をしてる、これは活用しないともったいないですよ」
「……ああ、確かに」
真空さんがそう頷いたので、俺は「だから――」と言いながら真空さんの顎をくいっと持ち上げた。
「――俺のことは殿下と呼べ、いいな?」
真空さんは感じ切ったような雌の顔で、こくこくと頷いた。
俺はふっと微笑んで、それから顔を引き締めて「そこに座れ」と命じた。真空さんはその場に座り込んで、俺を見上げた。
真空さんは期待でいっぱいになった顔だった。俺はそんな真空さんを見下すように見ると、問いかけた。
「真空は俺が好きか」
「はい、好き……あ、お慕い、申し上げております……殿下」
言いかけて、慌てて言い直した真空さん。
驚いた、随分とノリがいい。もしかして真空さんは、こういうプレイに憧れでもあったのだろうか。
「どこがだ?」
真空さんは最大限丁寧な言葉で言おうとしているのか、言葉を探すようにゆっくりと答えた。
「その……お人柄が、素晴らしいところと、非常に、見目麗しいところと……ええと、自分を、苛めてくださる、ところ、です……」
真空さんは下半身を隠すように座り込んだ足の間に手を挟み、言いながら興奮したのか、顔を赤らめて息を荒げた。
きちっと着た執事服とそれに合わせてセットしたのだろう髪型と対照的な、蕩けた声と欲情し切った表情。露出はむしろいつもより少ないのに、その格好はより淫らさを強調させていた。
衝動がどんどんと高まって、頭がくらくらする。もっと、真空さんを苛めて啼かせて溶かしたい。
「――なら、ここを舐めて俺の言うことなら何でも聞ける、と証明してみせろ」
俺は足で、とんとん、と地面を示した。真空さんが蕩けた顔で荒い息で地面を舐める姿を、想像するだけでどうしても口元がつり上がってしまう。
真空さんは、さすがに驚いたように顔を上げたが、俺の顔を見て「あぁぁ……」と熱い吐息を漏らした。
「お前が愛する俺の命令だ。まさか聞けないなんて言わないはずだ……できるだろう?」
しかしさすがにそれは躊躇うようで、「ええと……ですが」と真空さんは口ごもっていた。
「できるだろう?」
爪先で真空さんの顎を持ち上げ、微笑むと、熱に浮かされたように「で、できます……」と答えた。ゾクッと快感が走る。
そんな真空さんは可愛い、だけど、もっと感じ切った真空さんの顔が見たい。突き動かす衝動が抑え切れなくなり、俺は気付けば足で真空さんの頰を張り飛ばし、凄むように問いかけていた。
「できます? 随分と偉そうな答え方だな。『是非やらせていただきます』の間違いだろう?」
真空さんはくぐもった声を上げて倒れかけた体を手で支え、恐る恐る俺を見上げ――途端、雌の顔になった。
「あ……ぜ、っ是非ぃ……やらせて、いただきますっ……」
上ずった声で答える真空さん。
「そうだ、言えるじゃないか」俺は真空さんの股間を踏み付けた。「身の程をきちんとわきまえろ」
「あああぁぁ――ぁァッ!」
真空さんは背を弓なりに反らせて、嬌声を上げた。
「俺がいつ達していい許可を出した?」
「は、んっ……もう、し、わけっ……はぁっ……ありま、せっ……はっ……でん、かっ……」
ガクガクと震えながら、頭を下げる真空さん。
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