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8これからのこと

 どろっとした熱いものが喉の奥へと流れていく。雄の匂いが鼻に抜ける。しばらくしてからようやく、精液を無理やり飲まされたのだと理解した。  平太は俺を引き離すと、何も言わずに俺のズボンと下着を下ろした。俺は未だ残る快感にビクビクと体を震わせながら、これからされることを考えて、興奮してしまった。  卑猥な湿った音を立てて、下着が糸を引いた。今のだけでイッたのだと、それを見てから初めて気付いた。一度も手を触れていないのに――羞恥心が込み上げる。 「あーあ、はしたない子ですね。こんなに下着を汚しちゃって」  平太は有無を言わせず、するすると俺の下着を脱がせていく。それからその下着を俺に見せるように俺の目の前に持ってきた。 「ほら、これだけ汚れてますよ。ほとんど着てないやつとはいえ、これ、俺が貸したものですよね? それをこんな風に汚すなんて、正気ですか?」 「はぁ……っ、すみませんっ……」 「……ちゃんと掃除してくださいね?」  掃除……ちゃんと手洗いで洗濯しろということだろうか。少し戸惑って平太を見上げた。  平太は愉悦に口元を歪ませて、俺の口元をなぞるように撫でた。 「ここで」  何を言っているのか理解ができなくて、思わず訊き返した。すると平太は面白がるように続けた。 「だから、ちゃんと舐めて掃除してください、ってことです」  舐めて、というその言葉がさすがに信じられなくて、また訊き返してしまった。平太はそんな俺を見ても、急かすことはしなかった。 「できますよね?」  平太はそう、余裕たっぷりな声色で問いかけるのみ。まるで俺が逆らうはずがないという確信を得ているように。そんなご主人様の雰囲気を出されてしまったら――逆らえるはずがない。 「でき……あ、是非っ……やらせて、いただきます……」  できます、と答えそうになって、前に頰を蹴り飛ばされたことを思い出して、慌てて言い換えた。平太は少し驚いたように目を見開くと、堪え難い悦楽に笑みを溢れさせた。  顔を近付けると、顔を背けてしまいたくなるような臭いがした。自分の穿いていた下着なのだから、当たり前だ。これを舐めるのは、さすがに不快だ。だけど――俺は一度固く目を閉じ、覚悟を決めて舌を伸ばした。  思わず眉をひそめてしまうほど苦くて生臭かった。平太のものでこんなことを思ったことはないのに、むしろ美味しいとすら思ったはずなのに、自分のはとんでもなく不味い。気持ち次第でこうも変わってしまうものなのか。 「っははは、苦しそうですね。でも汚した罰ですから、全部舐め取れるまで許しませんよ」  苦しい、早く終わって欲しい――そう願ってしまうほどの苦痛を今俺は強いられている。不快で仕方ないのに、同時に堪らなく快感に思えてきた。人としての尊厳を踏みにじられて、こんな不快で惨めなことをさせられて……そう考えれば考えるほど、興奮が煽られた。  しばらくして、全て舐めとってから「終わりました……」と平太を見上げると、平太は満足気に頷いて、犬にするように俺を撫でた。 「よくできました」  ぶわ、と満たされた喜びが全身を駆け巡った。苦痛を強いられた快感、それだけじゃなくて、苦痛を何とか乗り越えた先に、平太にこうして褒められたことが嬉しかったのだ。そんなことを思うくらいに、もうすっかり俺は平太に支配されていた

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