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2ずっと一緒になんて

「真空さん? どうしました?」  そう電話越しに尋ねると、うわあいつすげー食い気味だよ、という渉の声が聞こえて、俺は渉を睨みつけた。 『……今、電話して大丈夫だったか?』 「大丈夫です。それにちょうど俺、真空さんに会いたいって思ってたところなんです」  すると真空さんは電話の向こうで黙り込んだ。 「照れてます? 本当に可愛いですね、そういうところ」  そう言うと、後ろで渉と雫が「さっきヤりてえってぶつぶつ言ってたやつと同一人物に見えねーな」「な! めちゃくちゃ美化したよなぁ平太」とひそひそ会話をし出したので、俺はまたそっちを睨んだ。 『……そ、それはそれとして……夏休み中、全く会えてないだろ?』  あまりのタイミングの良さに、返事をするのを忘れた。『……平太?』と訝しげに問われ、慌てて俺は返事をした。 「あっ、すいません。……そうですね、でも、無理して時間を作らなくてもいいですよ。勉強で大変な真空さんの邪魔をする訳にはいかないので」 『それが、お盆の期間あるだろ? 十三日から十六日、その四日間は塾が開いてなくてな。十五日と十六日は親戚の集まりがあるんだが……十三日と十四日、空いてるか?』 「空いてます」  何か予定があったか、と考えるよりも先に俺は即答していた。仮に何か予定が入っていたとしても、何としても空ける。 『そうか……ならよかった。じゃあその二日、どこか出かけないか?』  こんなにタイミングよく誘われるとは思ってもみなかった。俺は思わず天井を仰いだ。神様ありがとう、と心の中で呟いた。今だったら、そんな俺を見てげらげら笑う渉と雫の声も心穏やかに聞ける。 「はい! 出かけましょう! どこがいいですか? うーん例えば……海とかどうですか?」 『俺もそう言おうと思ってた。それで場所なんだが……プライベートビーチを所有してるから、そこでどうだ?』 「ぷらっ……プライベートビーチ、ですか……」  いきなり格が違うことを言われて、俺はしばし絶句してしまった。それをどう受け取ったのか真空さんは『嫌なら、無理にとは言わないが……』と言ってきた。 「嫌とかじゃないです、ただ……びっくりして。……俺がそこに行ってもいいなら、ぜひ行きたいです」 『なら、決まりだな。詳しいことはまた連絡する』  分かりました、と答えると俺は電話を切った。 「平太くんよかったね! 先輩に誘われて」  和泉がにこにこして言う。和泉は面白がるようににやにやしている渉と雫とは大違いだ。 「よかった……本当によかったよ……」  しみじみと呟くと、渉と雫はまたげらげら笑い出した。だが今はそれにすらイライラしない。 「海かぁ……花火とか持ってくべき?」 「持ってくべきだよ! せっかくプライベートビーチなんだから! 手持ち花火ってなかなかできる場所ないもんね」  和泉に勢いよく言われたので、俺は持って行くことに決めた。  真空さんとどこかへ出かけるなんて本当に久しぶりだ。去年もっと出かけておけばよかった、と今更ながら後悔するほど、真空さんとは会えていない。だから真空さんが足りない。多分自制が効かなくて、次二人きりになったらその瞬間に押し倒してしまいそうだ。  真空さんのことを考えながらにやけてしまっていた俺だったが、そこで真空さんから思いがけない衝撃的なことを言われるなんて、知る由もなかった。

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