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3ご奉仕させてくれないか
先輩は切なそうに眉を寄せ、ゆっくりと腰を上げながらディルドを抜いていった。
「……ん、んん……んぅ……」
そして、これも焦れったいほどに遅くゆっくりと腰を沈め、ディルドを挿れていった。
「……はあっ……あぁ……あ、ん……」
「……先輩」
さすがに焦れて、俺は声をかけた。
「いつもそんなにゆっくりしてるんですか?」
先輩は「……いや」と首を振った。
「なら何で?」
先輩は俯いて、蚊の鳴くような声で答えた。
「……恥ずかしい、から」
どくん、と血が滾るような感覚が訪れた。この先輩が俺の前で女みたいに恥じらっていると思うだけで何故か、ゾクゾクする。
「こういうこと好きなんでしょ先輩? ああ、嫌なら俺、帰りますから」
俺はわざとそう言ってみせ、背を向けた。帰る気なんてさらさらないのに。俺がそう言うや否や、先輩がまた、俺の腕を掴んだ。
「やるっ……から、見てて、くれっ……」
震える声で、先輩は言った。このやり取りそのものにも興奮しているのだろうか、先輩のモノはもう、腹につきそうなほどに勃っていた。
「……んっ、あ、あんっ……は、あっっ……!」
恥ずかしいのか、赤い顔を背けたまま、先輩は何度も上下に腰を振った。淫らな水音が響く。
ーーもっと、もっと先輩を蕩けさせたい。そんな、今まで感じたことのないほどに強く、体を突き動かすような衝動が俺を襲った。
俺は先輩の近くにしゃがみ込み、耳元で囁いた。
「先輩、気持ち良さそうですね? もう完全に勃起してますし、先走りもどんどん流れていってますし」
俺が耳元で囁き出すと、先輩は喘ぎ声の間に甘い吐息を漏らした。 言葉攻めにも感じているのだろう。
「もうイキそうなんじゃないですか? ねぇ先輩」
笑いながら囁くと、先輩はぶるりと背を震わせた。
「あ、イキそぅっ……もうっ、無理ぃっ……」
「恥ずかしくないんですか? 後輩にアナニーさせられてイクって。ああでも、先輩はドMだからそれがいいんですね」
言いながら俺は、先輩の頬を掴んで無理やり俺と目を合わせた。先輩の顔は、羞恥と快感によって真っ赤に染まり、おかしいほどに蕩けた顔だった。
「……すっげえ情けない」
「あ、ああぁっ……!」
思わずくすっと笑うと、先輩は一際大きく震え、白濁を吐き出した。
少しして先輩は息を荒く吐きながら、手元にあったティッシュで精液を拭き取った。そして落ち着いてきた頃に先輩が俺を見て、一言呟いた。
「……明塚、勃ってる」
「え!」
慌てて下半身を見るとーー確かにしっかり勃っていた。
「嘘だろ……」
まさか、今ので俺まで興奮したなんて。信じられない。信じたくない。俺はこの先輩なんて好みじゃない。SMなんて好きじゃない。なのに、どうして――
「明塚」
名前を呼ばれ先輩を見ると、先輩は驚くべきことを言ってきた。
「ご奉仕させて、くれないか?」
「……は?」
俺は座り込んで少し後ずさりしたが、先輩は意に介さず、にじり寄ってきた。
先輩の目は、イッたばかりにも関わらず、熱に浮かされたような目だった。そして、了承を得ないまま俺のベルトを開けだした。
俺はとにかく動きを止めるため、思いついたことを言ってみた。
「え、先輩、待っ……そもそもフェラの経験あるんですか?」
動きが止まった。――ないのにやろうとしたのか。
「お前はあるのか? された経験」
「いやそりゃ……まあ」
俺は言葉を濁した。付き合った相手は一人もいないが、経験人数は多い、なんて、あまり誰かに言いたくないのだ。
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