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4ご奉仕させてくれないか
「……じゃあ、どこをどうすればいいか指示してくれ」
「いや、していいなんて俺一言もーー」
何とか断るつもりでいたが、次の瞬間先輩から発せられた言葉に、不覚にも、ぐらっと揺らいでしまった。
「……ご奉仕させて下さい、ご主人様」
それを聞き、どくんと大きく何かが疼いた。ーーご主人様、か。となると先輩が飼い犬か。そして、そんなことを思ってしまった自分に戸惑った。
俺が無言でいるのを肯定ととったか、先輩はそのまま俺の下着を下ろし、顔を近付けた。そして、ゆっくりと口付けをするように舌を這わせた。
初めてで緊張しているからか、それともただ単に経験不足だからか、先輩の舌の動きは、焦れったいほどにゆっくりだった。
「先輩、そんなゆっくりじゃなくて、もっと激しく。それと、もっと唾液を出して、吸って下さい」
焦れったさに耐えかねてそう指示すると、先輩はそれに応えようと、動きを激しくした。
四つん這いになって俺に奉仕する先輩は、本当に従順な飼い犬みたいだと思い、ゾクッとした。慣れない動きながらも必死にしゃぶる先輩を、可愛いとすら思ってしまった。
先輩は、口の端から唾液が垂れることもいとわずにしゃぶっていた。その表情は恍惚としていて、先走りがどんどんと流れているのを見て、俺は思わず尋ねてしまった。
「……そんなに嬉しいんですか? しゃぶれたことが」
先輩は頷くと、一旦口を離した。それから扇情的な顔をして、色っぽく掠れた声で答えた。
「あかつかの、ちんぽ……すごいおっきい……おいしい……」
ぶわ、と激しい衝動がこみ上げてきた。それは、快感と嗜虐心と愛しさが混ざったものだった。そんな顔でそんなことを言われちゃ、興奮しないはずがない。
だけどもっと、もっとだ。もっと先輩を善がらせたい。くらくらする。頭の中が先輩でいっぱいになる。
先輩はしばらくしてふと、上目遣いで俺を見て、情欲に濡れた声で尋ねた。
「あかつか、きもちい?」
「っは……」
自分じゃ止めようもない欲望が溢れる。もうなんだっていい。今感じている震えるほどの快楽と嗜虐心が全てだ。建前なんてものはかなぐり捨てた。
俺は気付けば、先輩の頭を押してさらに深く咥えこませていた。
「う、ぐっ……」
先輩がぎゅっと眉を寄せる。苦しそうだ。は、と吐息が漏れてしまう。
堪らない。俺がこの人を、そんな弱々しい顔にさせているのだ。
屋上以外で見かけた先輩は噂通り、超然としていて何事にも動じなさそうなクールな雰囲気を醸し出していた。先輩は近寄りがたくて、憧れずにはいられないほどかっこよかった。
――それが、これだ。その先輩は今、俺のモノを喉の奥まで押し込まれて、涙目で俺を見上げている。苦しそうではあったが、明らかに官能的な色も混ざっていた。
「すごく気持ちいいですよ……先輩も気持ちいいんですよね?」
後頭部を押す手に少し力を込めると、先輩は目を蕩けさせた。その蕩けた目で俺を見つめながら頷くものだから、途端に俺の理性は吹っ飛んだ。
俺は我慢できずに先輩の頭を動かし、何度も喉の奥を突いた。先が熱い粘膜にあたる。熱く柔らかい口内で擦れている感覚が、堪らない。俺は今この先輩を、完全に支配しているのだ。
「ふうぅっ……ん、ん、んぅ……っ」
苦しくないはずがないのに、先輩は恍惚とした表情をしていた。先輩はされるがままで、快楽からか、生理的な不快感からか、その頰に涙が伝った。
ーーああ、物凄く無様で、そして何て興奮する顔なんだろう。
そんなことをちらりと考えてしまって、しかしそれをおかしく思う余裕がないほどに興奮してしまっていた。
「こんなことされて気持ち良くなるなんて、とんだ変態ですね」
くすりと笑ってみせると、先輩は体を震わせた。俺を見上げるその瞳はすごく気持ち良さそうで、そして物欲しげだった。
もう無理だ。早く精を吐き出したい。先輩の口が俺の精液で白く汚れる様を想像するだけで、堪らなくなる。先輩を俺で汚したい。
「先輩……もう出しますから、全部飲んでくださいね……」
先輩は頷いた。「早く欲しい」という目をしていた。これ以上は我慢ができない。俺は先輩の喉の奥まで突っ込んで、思い切り出した。
「んんんんぅっ……!」
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