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2そしてプロローグに至る
お盆に麦茶を乗せた先輩は、顔を赤くしてふるふると震えていた。あ、これ、さすがに怒ったかな。ちょっと目を合わせられなかった。
先輩は無言でドアを閉めて、テーブルにそれを置いて、俺に近づいてソファーに座った。
「……見たのか」
「す、すみません」
慌ててそれをベッドの下に戻し、そして意を決して先輩に向き直ると、先輩は潤んだ瞳で俺を見つめていた。
「み、見たのか……それを……」
先輩を見ていて気づいた。これは怒ってるんじゃなく、恥ずかしい顔だ。それどころか、俺の気のせいじゃなきゃ――勃ってる?
「……先輩」
「な、なに……っ」
俺が先輩に近づくと、先輩は焦ったように身を引いた。だが俺が先輩の耳元で「勃ってます?」と囁くと、
「う、うぅ……」
真っ赤な顔で唸ることしかできなくなった。
「もしかして、興奮しちゃいました?」
重ねて耳元で問いかけると、びくん、と体を震わせた。
「あぅ……」
まだその気じゃなかったのに、俺までそういう気持ちになってきた。ずるいだろ、その声は。
「ほら、ちゃんと答えて。自分が普段使ってる玩具見られて興奮しちゃったんですか?」
「ん……ご、ごめん……しちゃったぁ……」
ゾク、と震えが背筋を走る。先輩はその気にさせるのが天才的に上手い。しかも無自覚で。
「先輩」
耳元で何かを囁くだけで、体を震わせる先輩。耳が弱いんだろう。
「今日は、玩具使いましょうか」
「はぁん……っ」
先輩は切なげな声を上げた。口角が上がってしまう。本当に、どこまで煽るんだろう。
おいで、とベッドに導くと、先輩は素直にベッドの上に座った。それから俺が服を脱がせる間も従順で、俺が仰向けになって足を開脚するように言うと素直に従った。
「明塚ぁ……」
ついでに、この蕩けた声と期待に満ちた表情だ。
こんな姿を俺に見せてくれるのに他の人と付き合ってるのか。いや違うか、好きな人にはこんな姿を見せられないから、どうでもいい俺に見せるのか。
それは、ちょっと嫌だ。
……なんて、バカなことを考えてしまった。慌ててその感傷じみた感情を振り払った。
「普段どれを使ってるんですか?」
「え、っと……それ、とか」
先輩が恥ずかしそうに指差したのは、大きめのバイブ。知ってたけど結構大胆だ。
「じゃあ、これ使ってたっぷりいじめてあげますから」
そう囁いてみせれば、先輩は「ん……」とこくりと頷いた。
ローションを手にとって入り口に塗り込む。それだけで先輩は「ん、ぁ……」と切なげな声を出した。
浅く指を出し入れする。何回かやって気づいたが、先輩は優しくされるより乱暴に、それから浅いところより奥の方が好きだ。だからこそ、優しく入り口の辺りを愛撫した。
そうすればほら、
「うぅ……あかつか……もっとぉ……」
先輩はすぐ物欲しそうな顔で自分から腰を揺らし始めるのだ。そう、俺はこの顔が見たかった。ゾワリと快感が走る。
「もっと、なに? ちゃんと言えないんですか?」
少し凄んでみせると、中が締まった。
「もっと、奥……おく、さわってほしい……っ」
「よく言えました」
にっこり笑って頭を撫でると、先輩はだらしないくらいに顔を弛緩させた。
たぶん今の俺は、完璧に雰囲気に流されている。だって、そんな先輩がたまらなく可愛く思えてしまった。
「あぁ……っ! そこ、っん、あっ……!」
奥の方、特に前立腺の辺りを刺激するだけで、先輩は嬌声を上げた。
「気持ちいいですか?」
先輩は小さく頷いた。眉が切なげに寄せられる。指を増やせば増やすほど、その表情は甘やかになっていった。
そろそろ頃合いかな、と指を引き抜くと、先輩はきょとんとした顔をした。腰は物足りなそうに揺れている。
「これ、使うって言ったじゃないですか」
バイブを手に取ると、先輩の表情はとろんと蕩けた。ああ、本当に――これ以上にエロい人を俺は知らない。
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