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3そしてプロローグに至る
「むりっ……! むり、だからぁ……! あかつか、待っ……ああぁ……っ」
先輩はいやいやをするように首を振り続ける。その割に恍惚とした表情をしているから、絶対に嘘。
先輩にバイブを突っ込んだ後、俺は一気に振動数を最大にした。たぶん焦らすよりこうやって乱暴に扱った方が好きだろう、という読みは当たった。本当にドMだ。
「なんで無理なんですか? 随分と気持ち良さそうですけど」
一度止めて問いかけてみると、先輩は顔色を伺うように俺を見た。
「さ、最大は強すぎて……怖くて、あんまり使ったことないから……しかも、いきなり最大なんて」
「でも、気持ちいいですよね? そういう顔してましたよ」
先輩は恥ずかしそうに顔を逸らした。それを俺は無理やり戻した。
「ほら、俺の顔見てください」
とろんと目が蕩けた。そういうところが本当にずるい。
「気持ちいい、けど……気持ちよすぎるから、怖い」
「どうしても?」
躊躇ったのち、小さく先輩は頷く。
「一回イケたらなんでも好きなことやってあげる、って言ってもですか?」
問いかけてみると、先輩はうろうろと視線を迷わせた。もう一押しだと思い「先輩?」と耳元で囁くと、先輩は不安そうに俺を見上げた。
「……本当に、なんでも?」
え、そんなにすごいプレイを要求されるの? と内心不安になったことは極力悟らせないように、俺は頷いた。
そうしたら先輩はゆっくりと頷いた。
「分かりました、じゃあ」
言いながら一気に最大まで上げると、先輩は襲いくる快楽に耐えるようにベッドのシーツを掴んだ。
その先輩の痴態を見ながら俺は――ある衝動と戦っていた。
先輩はいいかもしれないけど、俺は愛撫をする方ばっかりだ。それから、何をしても確実に拒否しない、そしてとてもエロい先輩を前に、俺はズボンを脱ぐことすらしていない。つまり、生殺しだ。
前がそろそろ苦しい。先輩がなにを要求してくるかは知らないが、しゃぶってもらうくらいはいいはずだ。
……いや、本音を言ってしまえば抱きたい。バイブなんかじゃなくて俺のもので突いたらどうなるだろう。確実に気持ちいいはず、そして確実に先輩は善がるだろうに、どうして俺は抱けないんだろう。
違う。抱けないんじゃない、俺が抱かないと決めているだけだ。抱いたら後戻りできない。抱いたら本当に、先輩にのめり込んでしまいそうだから。
「あぁっ……! あかつか、っぁ、イク、イッちゃうっ……!」
「いいですよ。ほら、手伝ってあげますから」
内心を悟らせないように俺は笑った。そして苦しそうな前を扱いてあげると、「だめっ……」と弱々しい声を上げた。
それから先輩は、一際大きく体を震わせると、快感に耐えるような表情をして、精を吐き出した。
バイブを抜いて、それから付けたコンドームを外して捨てていると、先輩の視線に気づいた。余韻が残っているのか、未だとろんとした瞳で俺を見ながら、先輩は尋ねた。
「……慣れてるのか、こういうこと」
「あー……いや、その……慣れてないって言ったら、嘘になりますけど……」
慣れてないと言ったら嘘になる、どころじゃないとは言いたくなかった。何となく。引かれると思ったのかもしれない。
「……そうか」
先輩はぽつりと呟いた。その声色が少し寂しそうに感じたのは、気のせいだろう。
「……で? 約束ですけど、やってほしいことって何ですか」
そう問うと、先輩は「あー……えーっと……」と狼狽え始めた。
初っ端から「踏んでくれ」って言ってきた人が狼狽えるほどのお願いなのか。ちょっと怖くなる。……鞭とか蝋燭とか、そんなものを渡されると困るな。そこまで覚悟は決まってない。
まあ、やれって言うなら頑張ってはみるが。でもさすがに、そんな上級者向けの道具をいきなり使いこなせるとは思わない。そこら辺は勘弁してもらうしかないか。
そういうことを悶々と考えていたが、先輩の頼みは違った。
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