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9そしてプロローグに至る

「んっ……! ふぅ、ん……んん……」  可愛い声が聞こえる。もっと、もっとと貪ると、先輩は俺の体に手を回してきた。  先輩は少しだけキスが上手くなった。それは俺が仕込んだと考えると、堪らなくなる。  何度か息継ぎをしながらねっとりとキスをし口を離すと、先輩は 「あ、あかつかぁ……」  と蕩けた声で俺の名前を呼びながら、きつく抱きついてきた。  誘っているようにしか思えない。身体から俺のものにしてしまおうか。そんなことすら考えてしまう。……俺じゃない、先輩のせいだ。  先輩は俺を抱きしめていたが、ふと何かに気づいたのかもじもじとし始めた。首を傾げると、先輩は恥ずかしそうに言った。 「……明塚、あの……勃ってる?」 「え? ああ……本当だ。気にしないでください」  そう言いながら先輩を離そうとすると、先輩はそれを留めるように俺の袖を引いた。そして、驚くようなことを言った。 「ええと、その……俺が、抜こうか?」  先輩は、今日親が海外出張だから、と言いながら家の中へ俺を入れた。けれど遅い時間だったからか、部屋じゃなくて玄関からすぐのリビングに。  ダイニングチェアに座るように言われて座ると、先輩は床に座り、俺のズボンのチャックをそろそろとおろした。 「……フェラしてくれるんですか、先輩」  先輩はこくんと頷いた。そしてためらいもなく咥えると、俺のものに美味しそうに舌を這わせた。 「んぅ……ん、っん……」  先輩から鼻にかかったような甘い声がする。普通しゃぶるくらいでここまで声は漏れないし、こんなに嬉しそうな顔はしない。どこまでエロいんだろう、この人は。  先輩はフェラも少し上手くなった。これも俺が仕込んだんだ、と思うとどうしようもなく興奮する。 「美味しそうにしゃぶりますね、先輩」  先輩は上目遣いで俺を見ると、「ん……」と吐息を漏らした。その感じ切った顔にゾクゾクする。  先輩の下半身も膨らんでいた。先輩は踏まれるのが好きなんだっけ、そう思い出して、俺は先輩の下半身を踏みつけた。 「んぅ……!」  びくん、と先輩は震えた。そのまま足を動かすと、先輩は息を荒げた。 「やっぱ変態ですね」  先輩はまた俺を見上げた。『もっと』とその目が語っていた。思わず口元が緩んでしまう。  ぐり、と踏みにじると、先輩は身体を震わせた。快感に耐えるように自分のスラックスの裾を握っている。 「イキそうですか?」  先輩は頷いた。フェラしながら踏まれて達しそうになっている、なんて、本当に変態だ。ドン引きして然るべき――なのに、そんな先輩に興奮が煽られる。俺も変態なのかもしれない。 「ははは! ……でも俺がイク前にイッたらダメですから。ほら、頑張って俺のことをイカせてくださいよ?」  言いながら先輩の後頭部を掴んで奥へ押し込む。先輩は一瞬身体を強張らせ、それから恍惚とした表情になった。 「無理やりが好きなんですか、本当気持ち悪いですね」  その言葉にすら感じてしまうのか、先輩はさらに強く自分のスラックスの裾を握り込んだ。ドMな先輩に影響されてしまったのか、そんな先輩がどうしようもなく可愛く思える。 「ちゃんと舐めてください。止まっちゃってますよ」  後頭部に手を添えたまま言うと、先輩はさっきよりも大胆な動きで舐めた。正直すごくイイ。単純な気持ち良さも、それからどこかうっとりとした表情でしゃぶる先輩も。 「やればできるじゃないですか。……もう出しますから、ちゃんと飲んでくださいよ」  先輩の瞳が期待を映し出す。  上目遣いで、感じ切ったメスのような表情で、奥まで俺のものを咥えこんでいる先輩は、心底いやらしいと感じた。……たぶんそんな先輩が、俺は――。 「んんんンぅ――っ!」  俺は先輩のを思い切り踏みつけ、そして喉の奥に当たるまで突っ込んで達した。精液を喉の奥へと直接流し込むような形になった。先輩は高い声を上げて、恍惚とした顔で、身体をビクつかせてイッた。 「はぁ……あ、あかつか、じゃあまた……」  余韻が残っているのか、先輩は火照った顔で、とろりと微笑んだ。  先輩は俺の家まで送ろうとすらしてきたが、それじゃ俺が送ってきた意味がない。だから、玄関まで送ってもらうことにした。  ……それに、こんなエロい顔をした先輩を俺の家まで歩かせるなんてできない。そのまま家に連れ込んで襲ってしまいそうだ。夜遅いから、と今ですら割と頑張って堪えているのに。 「はい、じゃあまた」  また明日、とは言えない。明日こうして会えるとは限らないから。学年も違えば交友関係も違う。そもそも今日だって、一緒に下校してきたわけじゃない。  また明日、とすら約束できないような関係性なんだな、と柄にもなく少し切なくなる。だけどきっと、 「……先輩って本当エロいですよね。俺、そういうところ結構好きですよ」  ――少しだけ、茶化すように本心を伝えるくらいは許されるはずだ。俺はそれだけ言って、先輩に背を向けた。

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