26 / 373

1勝手な期待と独占欲

 ーー反則だと思った。  そう、昨日行為を一度終えてから、不意に晒した明塚の素顔が、そう思うくらい、かっこよかったのだ。  本人がことあるごとに自称するように「地味」そのものな外見なので、顔立ちも記憶に残らない顔立ちだと思っていた。  元々、顔にはほとんど期待していなかった。それでも好きだと思っていた。  ……しかし、あれは反則だろう。  明塚の顔立ちは、一言で言えば「俳優顔」だった。  アイドルのようにきらびやかな顔立ちではないが、驚くほどに整った顔立ちだ。  あの顔をなぜわざわざ隠しているのか、疑問で仕方ない。  俺が、明塚のことを好きになってしまったのに気付いたのは、初めて会った次の日。  ただ気付いたのがその日、というだけで、実際は一目惚れだろう。  ……俺はきっと、あの日、あの目にすっかり囚われてしまったのだ。  明塚のあの素顔を思い出すだけで、苦しいほど心臓が鳴る。  そして、そんな自分に苦笑した。  ーーこんなにどうしようもなく惚れたのは、初めてじゃないか、俺。  不意に、スマホに連絡が来た。何だと思って見ると、 「……っ!?」  明塚から連絡が来ていた。  思わず声を上げそうになったのを、すんでのところで抑えた。  急き込んで連絡を見ると、こう書かれていた。 『先輩、今屋上に来れますか?』  反射的に時計を確認する。  朝のホームルームは八時半から、そして今は八時になりそうなところだった。  それを確認するや否や、急いで鍵を持って屋上へと走った

ともだちにシェアしよう!