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8ずっと一緒になんて

「ははっ……すっげえ眺め……」  俺は思わずそう呟いた。それから真空さんの頰に手を這わせ、囁いた。 「こんなのわざわざ自分で買うなんて、俺にこうしてもらいたかったんですか?」  真空さんは顔を逸らして何事かを言おうとした。だから俺は、髪を掴んで無理やり顔を戻した。こうすると真空さんが悦ぶし、何かを言う時は顔を逸らしてはいけない、というのがいつの間にか生まれたルールだったから。 「目逸らしてんじゃねえよ雌犬」  顔の近くで低く囁いてやる。それだけで真空さんは「あ、ぅ……」と断続的に体を震わせた。  真空さんがこれを使って欲しいと差し出したのは、拘束具だった。それも、手枷と足枷とM字開脚ベルトが一緒になった、銀色の鎖と黒色のレザーの拘束具だった。結構作りがしっかりしていたので、相当値が張ったんだろうと思う。こういうものはただでさえ馬鹿高い。 「っはは! これだけで感じるなんてやっぱり気持ち悪いですね」  髪を掴んでもう少し顔を近づけると、真空さんは「ぅあ……ごめんなさい……」と、ぎゅっと切なげに眉を寄せた。 「それで? 俺にどうしてほしいですか?」 「ご主人様の、好きに……してください……」  真空さんは上目遣いで俺を見た。熱く濡れた瞳に俺まで溶かされそうだ。  真空さんの言葉を聞いて、俺は考え込んだ。どんなことをしてやろうかと。焦らしに焦らして切羽詰まった切なげな顔を見るのもいいし、快楽にどろどろに溶けた顔を見るのもいい。だけど、強すぎる快感を与えて真空さんの泣く姿を見るのもいい。考えて俺は、真空さんの泣き顔を見たいという結論に至った。 「じゃあ、もうやめてくださいって泣いて懇願するくらい、気持ち良くしてあげますよ。そうやって酷く扱われるの好きですよね? ド淫乱だもんなぁ、お前」  耳元でいたぶるように囁いてやる。真空さんは恍惚とした表情で小さく喘ぎを漏らしていた。真空さんの感じ切った表情は堪らない。こんな顔に俺がしているのだと思うと、ゾワ、と快感が走る。  まずは、と指の腹で優しく乳首に触れると、それだけで真空さんは期待に満ちた嬌声を上げた。下を見ると、まだそこにしか触れていないのに、腹に張り付くくらい勃起していた。それからもう片方の乳首もねっとりと舐めあげると、真空さんは「はあぁん……」と甘く体をくねらせた。手枷がじゃら、と無機質な音を立てる。  そのすぐ後に両方に軽く手を添え、あえて動きを止めて真空さんを見ると、期待ともどかしさに満ちた表情で真空さんは俺を見つめ返した。しばらくその状態でいると、真空さんはもどかしそうに息を荒げた。それでもその状態でいると、真空さんは辛抱が効かなくなったのか、自ら体を揺らして俺の手に自分の乳首を擦り付けてきた。 「乳首ぃ……ちくび、触ってぇ……あ、っん……ご主人様ぁ……ご主人様ぁん……」  真空さんは甘い声で快感を乞い願った。ビクビクと体を震わせながら俺の手に乳首を擦り付け、甘くおねだりをする真空さんは、目眩がするほどに扇情的だった。俺はほとんど触っていないにも関わらず、そこはもう既にコリコリだった。多分、俺が触るずっと前から期待をしていたのだろう。こんなに淫らな人は他にはいない。  もっと意地悪がしたいと思い、俺はそれでも「嫌です」と笑った。俺のその笑顔はどういう風に映ったのだろう、真空さんは悲痛な、それでいて感じ切った雌犬の顔で「うぅ……」と呻いた。  そのままでいると真空さんは、乳首、ちくび、と熱に浮かされたように連呼しながら体を揺らし続けた。理性は吹っ飛んでしまって、真空さんの頭の中には快感を追い求めることしか残っていないだろう。どうしようもなく乱れた真空さんの淫猥な姿に、俺は知らず知らずのうちに唇を舐めていた。音が聞こえるくらい、俺の心臓は早鐘を打っていた。  真空さんの姿をしばらく堪能した後、俺は何の予告もせずに、指で転がすように摘んだ。散々焦らしたせいか、真空さんは「ぅああっ!」と大袈裟なくらい体を跳ねさせた。そして硬くなった乳首をやわく責め立てると、それだけで真空さんは「あ、あ、あぅ」と嬌声を上げた。真空さんの陰茎は苦しそうなくらいに張り詰めて、先からは我慢汁をだらだらと流していた。  やがて真空さんが指の優しい愛撫にも慣れてきて、物足りなさそうに体をくねらせ始めてから、俺は手を離した。俺の指を追いかけるように真空さんは胸を突き出した。浅ましいくらいに快感を追いかける真空さんを見て俺は、意図せず口から笑いが零れていた。  それから荷物の中から俺はあるもの――ローターを取り出して、スイッチを入れて真空さんに近づけた。真空さんはどう使われるのか察したのだろう、「はぁぅ……」と熱い吐息を吐いた。 「たったこれだけの刺激であられもなく乱れちゃうのに、こんなものを当てたら一体どうなっちゃうんでしょうね?」  それを考えるだけでゾクゾクする。真空さんのことをいくらでも俺の自由に乱れさせることができる、と思うと、頭の中が沸騰しそうなくらい興奮する。焦らすように、ゆっくりとローターを近付けていく。真空さんの、期待に濡れた熱い吐息が聞こえる。

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