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5永遠の片思い

「やり方がまずいことは俺も分かっているが、どう接すればいいか分からないんだ。それに俺としては、どうしても賛成はできない。許嫁がいるから、だけじゃない」 「どうして?」 「まず男同士だ」  泰平はそう言い切った。その躊躇のない言い方を聞いて、ああ、と悲しくなった。泰平はそういう人だ。それが分かっていたからこそ、ずっと気持ちを押し込めてきたのだ。 「それから、相手の家庭環境にかなり問題があって信用ができない」 「それは確かに不安になるね。その子には会ってみたの?」  泰平は口ごもった。大方、その子の身辺調査は徹底したけれど、その子に会おうだなんて思いもよらなかったに違いない。 「君の悪い癖だよ、ステータスで他人を見ようとするのは。いくら素晴らしいステータスを持っていてもぼんくらな人間はいるし、いくらステータスが劣っていても優れた人間はいる。会ってみなきゃ分からないことだってある」  黙り込んだ泰平に、私はこう声をかけた。 「伊織もね、男と付き合い始めたんだって何ヶ月か前に相手を連れてきたことがあるよ。伊織から聞いたんだけど、その子も真空くんの相手みたいに家庭環境はよろしくない。それから、素行もいいものじゃない。だけど私は反対しなかったよ」 「何故? 不安じゃないのか?」  泰平は信じられなさそうに聞き返した。 「そりゃ不安だったさ。でもね、会ってみたら謙虚ないい子だったよ。それに伊織が選んだ相手だ、間違えるはずがない」 「だけどもし何かあったら? 育ちも素行も悪いんだろう?」 「私は、何かあった時に助けるのが親の役目だと思ってるんだ。何かあるかもしれないから、と子供の目の前から不安要素を全て取り除くことは親のエゴさ。だって、失敗からでしか学べないこともある」  泰平は目を瞬いた。それから、視線を落とし「靖仁には敵わない」と呟いた。けれどその後、首を振って「だが」と続けた。 「俺はどうしても、賛成しかねる」  泰平がそう言うのも無理はない。普通だったら賛成はできないだろう。子供が同性とお付き合いをしていると知り、しかも相手が家庭環境に問題がある人だと知れば。その上真空くんには既に許嫁がいるのだ。泰平の考え方は全くもって正常だ。  だがそれではきっと、真空くんの気持ちが蔑ろにされる。――好きな相手がいるのに別の相手と所帯を持ち、子を設けることの苦しさは私が一番よく知っている。妻と子が愛せないから苦しいのではない、その逆だ。妻と子を愛しているからこそ、別に想う相手がいることに途方もない後ろめたさを感じるのだ。 「……好きな相手がいるのに他の人と結婚したら、一生苦しみ続けるよ」  私をじっと見つめている泰平を見て、初めてそう呟いてしまっていたことに気付いた。 「……靖仁はいるのか、嫁の他に好きな人が」  気まずくて黙り込むと、「俺に隠し事か」と泰平は言った。少し悲しそうな声色だった。ああもう――そんな声で言われたら、隠すことなんてできないじゃないか。 「ああ、いる」  私はそう言った。目を見て言うことなんてできなかった。

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