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5こんな服装なんて聞いてない
「真空さん?」と声をかけてみると、真空さんはみるみるうちに顔を赤くした。近付くと、耳まで真っ赤にして俯いた。
「真空さん、どうですかこの格好」
「あ、う……えっと」
真空さんはしどろもどろになるばかり。顎に手をかけて無理やり俺と視線を合わせると、真空さんは恋する乙女のような顔で口をぱくぱくさせた。
「かっこいい?」
耳元で囁くと、真空さんは僅かに震え、こくこくと頷いた。
「口で言ってください」
「か……かっこいい……です……」
「どれくらい?」
なおも意地悪な質問を重ねると、真空さんは視線を彷徨わせ、押し黙った。ほら真空さん、と急かすように囁くと、真空さんは俺の耳元に口を寄せ、消え入りそうな声で囁いた。
「その、今すぐ……抱いて欲しいくらい……」
そう来るとは思わなかった。相変わらず真空さんはいい意味で予想を裏切る。劣情が耐え難いほどに高まる。これで今すぐ抱きたくならない方が間違っている。
渉を振り向くと渉は察したのか、
「おい平太、そんな顔してもシフトは変えねーからな。お前と雫が午前で俺と和泉が午後だ」
と顔をしかめつつ言った。
「……どうしても?」
「どうしても。話し合って決めただろーが。まあでも……文化祭始まるまであと軽く三十分はあるから」
その後を言わなかったのは渉の優しさだろう。「ありがとう渉!」と言ってから真空さんに小声で尋ねた。
「……屋上の鍵あります?」
真空さんは一度目を瞬き、察したのか、
「今はない、が……屋上の扉の前にある踊り場でも、多分……」
と囁いて、期待のこもった目を向けた。「じゃあそれで」と言うと、真空さんはこくりと頷いて、俯いた。
「へい、っん……」
着くや否や唇を重ねると、真空さんは驚いたような声を上げ、すぐに俺に体を委ねた。どれくらいしていたのか分からないが、唇を離すと真空さんはその場にへたり込んだ。
「真空さん?」
真空さんは息も絶え絶えに、真っ赤な顔を背けて言った。
「腰……抜けた」
キスだけで腰を抜かした真空さんを見下ろして、俺は一気に支配欲が満たされるのを感じた。この人の感度をここまで高めたのは、俺だ。
「真空さん、あんまり時間ないですけどどうせなら軽いイメージプレイやりません? この衣装はもらったので、本格的なのは文化祭終わってから」
「イメージプレイ? ……ああ、去年もやったな」
「それとはまた違ったやつを。今年は俺が執事服を着てるので、いつもとは逆……真空さんがご主人様で」
戸惑ったように真空さんが見上げてくる。しかし、俺に任せてください、と言うと、すぐに頷いた。
渉はこの格好を典型的なドS執事だと言った。ならそれを演じてやろう。そんなことを考えながら、自分がわくわくしているのに気付いた。俺はイメージプレイが好きなのかもしれない。
俺は少し考え、まずへたり込んだままの真空さんを見下ろしながら、冷笑を浮かべてみせた。そうすると真空さんは、とろんとした目で俺を見上げてきた。
「ああ……いけないお方でございますね。たかが私の口づけごときで、ここまで感じてしまわれるとは」
そう言って頬を撫でると、それだけで真空さんは「あっ……」と僅かに声を漏らした。
「ご主人様ともあろうお方がこのような痴態をお晒しになっていると、周囲に知れたらどうなってしまうのでしょうね?」
真空さんの目はもう俺に釘付けだ。真空さんの下半身は、しっかりと自己を主張していた。
「……ごめんなさい……」
「いいえ、私はご主人様を責めたのではございません。むしろ、そのようなところが非常に愛らしい……」
囁いてから耳を舐めると「ひっ……」と声を漏らしながら真空さんは体を震わせた。
「さあご主人様、ご命令を。私ならばご主人様を」俺は真空さんの膨らんだ下半身を撫でた。「――『楽』にして差し上げられます」低い声で言った。
真空さんは迷った。迷った結果、俺を上目遣いで見てこう言った。
「踏んで……俺のココを、踏んでください……」
真空さんは自己を主張しているところを示しながら言う。何を示しているのは自明の理だったがそれでも、俺はわざとらしく首を傾げた。
「どこ、でございますか?」
尋ねると、真空さんは一層息を荒げた。
「はぁ……いやらしい期待で、いっぱいになった、俺の……おちんぽ……踏んでくださいぃ……」
真空さんが頼んでもいないのに淫語を言うのも、俺が仕込んだ成果だ。ゾクゾクする。今すぐねじ伏せて挿入したい気持ちをぐっと堪えた。時間があまりないのだ。そんなことをしてしまえばきっと、歯止めが効かなくなる。
「ふふっ……踏むだけでよろしいのですか? たとえば……」俺は前を開け、真空さんの顔を無理やりそれに近付けた。「ご主人様のお好きなコレは、味わわなくてよろしいので?」
「ああぁ……」
真空さんの顔が蕩ける。欲しくて欲しくて堪らないという顔だ。
「欲しい……はぁん……しゃぶらせて、ください……」
真空さんは切なげな声で言う。
「どうぞ。ご自由にお召し上がりください」
言いながら強引に咥えさせると、真空さんは「んんぅ……」と快感に体を震わせた。
真空さんは悦楽に眉を寄せながら、本当に美味しそうに、あるいは快感を得ることに必死になった顔で、俺のをしゃぶった。
「はん……おいひ、ふぅ……おいひい……」
その状態で軽く踏みつけてやると、その度に真空さんは体をビクビクと震わせた。
「ご主人様、もっと喉の奥を使って、お召し上がりください」
言いながら、俺は真空さんの後頭部を掴み、喉の奥まで突っ込んだ。真空さんは声にならない声を上げ、軽く達した。
それを俺は待っていた。何せ真空さんは、一度軽く達した後の方が感度が良い。俺はさらに真空さんの口内の奥へ、それを突っ込む。俺の亀頭が熱い粘膜に触れるのが分かる。真空さんは苦しそうに咳き込みこそするが、その顔は抑え難い快楽に蕩けていた。
そのまま下半身を踏みにじると、真空さんは体を反らすように震わせ、嬌声を上げた。そんな状況だというのに真空さんは健気にも、舌を動かしなお奉仕しようと頑張っていた。
「はははっ……」
思わず笑いが口から漏れる。こんな真空さんが可愛くて堪らない。真空さんは俺を上目遣いで見た。被虐心と快感とでどろどろに溶けた、くらくらするほどに淫らな顔だった。一際強く踏みにじると、真空さんは「んんんん――ッ」と体を震わせ、達した。
息が落ち着いてきた頃、俺は真空さんの頭を撫でて、問いかけた。
「大丈夫ですか?」
真空さんはゆるゆると頷いた。まだ少し惚けた顔をしていた。
「どうでした?」
「文化祭後でもう一回、ちゃんとやりたい」
お気に召したようでよかった。それに俺自身も、かなり興奮した。いつもと主従関係を逆転させた上で、いつものように真空さんにおねだりをさせてどろどろに溶かすのは、よかった。俺がご主人様と言うのも新鮮だった。
真空さんは午前中は俺のクラスにいて――というよりずっと雫の側にいたいという小深山先輩に付き合わされて、だそうだが――午後に俺と出し物を回る予定だ。ちなみに三年生は参加が任意で、真空さんが参加するのは一日目の今日だけ、だそうだ。
「もうちょっとで始まっちゃうので、戻りましょうか」
俺がそう言いながら立ち上がろうとする真空さんを支えると、真空さんは赤さの残った顔で、こくりと頷いた。
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