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9勝手な期待と独占欲
「じゃ、先輩が屋上出る少し前に、俺も教室に戻ります。……五分前くらいでいいかな」
明塚はそう呟くと、思い出したように俺に問いかけた。
「……そうだ先輩。またこういうプレイしたいですか?」
突然の問いにも驚いたが何より、それを問う明塚の顔が苦々しかったのに驚いた。
「俺は、どっちでもいいが……明塚は?」
「したくないですね」
即答され、更に驚いた。
「……何で?」
すると、明塚は更に苦々しい顔になった。
「……理由は言いたくないんですけど」
「そうか、それなら仕方ないか……」
とは答えたが、隠し事をされるのは正直嫌だった。
すると、顔に出ていたのか、明塚は観念したようにため息を吐いた。
「分かりましたよ。答えますから、そんな顔しないで下さい」
そして明塚は、頭をがりがりと掻いてから、答えた。
「俺の友達に、噂好きで情報通な友達がいるんですけど。加賀美っていう。そいつが、顔は悪くないし女にも興味があるのに、女には全くモテなくて男にはモテる可哀想な奴でーーと、それは今関係ないか」
いきなり話が飛んで戸惑う。が、黙って聞くことにした。
「そいつから先輩の話も割と聞くんですけど、今日聞いた話、どんな内容だと思いますか?」
「……どんな内容だ?」
聞くと、明塚は不機嫌そうに眉をひそめた。
「『何か今日の前園先輩はエロい』だの、『媚薬飲んでるんじゃないの』だの、『今なら襲えそう』だの、そんな内容ですよ。加賀美、色んな人からそんな話聞いたらしいです」
「……はぁ!?」
顔を引きつらせて訊き返すと、明塚は冗談を言う顔をしていなかった。
ーー嘘だろ。もうしばらく、誰の顔も見たくない。
羞恥心やら何やらで、身動きが出来なかった。
「……ったく、この一日どんだけエロい顔で過ごしてたんですか」
吐き捨てるような明塚の言葉に、トドメを刺された。
……正直泣きたい。
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