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1ノンケも目覚めるド天然

「……明塚。お前何か、すげー不機嫌じゃね?」  そう加賀美に言われ、確かにささくれ立っていたことに気付く。  ーーでもそれもそうかもしれない。  いきなりの授業変更で嫌いな教科の授業ばかり続くし。  帰りのホームルームは先生の話が長くてなかなか終わらないし。  「昨日の前園先輩はエロかった」なんて話がちらほら耳に入るし。  当の真空さんからは「外せない用事がある」なんて言って今日は会えないし。  外せない用事で真っ先に思いつくことが小深山先輩との用事だし。  とにかく嫌なことだらけなのだ。  ……待ってくれ。  嫌なことって、真空さん関連のことばかりじゃないか、俺。  おかしなことは考えるな俺、真空さんとはただのセフレなのに。そう自戒した。 「まぁ、色々あって」  そうお茶を濁すと、言いにくそうに加賀美は切り出した。 「そんな機嫌悪いお前には言い辛いんだが……俺さ、地理の先生に荷物運び頼まれたのよ」  嫌な予感がして、顔を引きつらせた。  とにかく、促すことにした。 「……で?」 「……それ、手伝ってくんね?」 「絶、対、嫌、だ」  強調して断った。誰が何の利益もない手伝いを引き受けるか。面倒だ。 「そもそも何で俺な訳? 断るの目に見えてたろ?」 そう言うと、「そうなんだけどさぁ」とぼやく加賀美。 「一人じゃ大変らしくて。それで他にも誰か手伝いを頼んでって言われて、そしたら先生何て言ったと思うよ? 『そうだ、明塚なんてどうだ? 加賀美、明塚と仲良いだろ? 明塚なら真面目だし安心だな!』 だと」  加賀美はそして、哀れみの目で俺を見た。 「……どうする?」 「断る訳にはいかねえだろそれ……っ!?」  思わず頭を抱えた。  断ったら信用を落とす、そして信用を落とすと色々と不便だ。  とどのつまり、断るという選択肢はない訳だ。 「……真面目なのも、こんな弊害があるんだな」  同情するように呟く加賀美を、 「そもそもお前が適当な理由つけて断っときゃよかっただろうが」  と睨みつけた。 「そりゃそうだけど、オッケーしちゃったもんは仕方ないだろ?」 「…………あぁクソ、しばらくお前を恨んでやるから覚悟してろ」 「悪りい」  手を合わせて拝む加賀美に舌打ちしたところで、ようやく帰りのホームルームが終わった。

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