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2ノンケも目覚めるド天然
「ありがとな、明塚、加賀美。助かったよ」
「いえ。頼っていただいて嬉しいくらいです。また何かあったら言ってください」
礼を言う先生にそう、猫をかぶって答えた。
……嬉しい訳あるかボケ。ただでさえ苛ついてるのに、何でこんな面倒事を押し付けられなきゃならない。
すると先生は、にこにこと嬉しそうに言った。
「いやぁ、明塚はさすがしっかりしてるなぁ。加賀美、お前も見習えよー?」
「……うっす」
加賀美は一瞬俺を横目で見て、腑に落ちない顔で頷いた。
先生が上機嫌で去った後、納得いかなそうな表情で加賀美がぼやく。
「……何で明塚だけ褒められんの。引き受けたの俺なのに。お前外面良すぎ」
俺はそんな加賀美を鼻で笑ってやった。
「はん。世の中、外面良い奴が勝つんだよ」
すると加賀美は更に納得いかなそうな色を浮かべ、「くっそぉ」と顔を歪めた。
「絶対おかしい……どう楽するかしか考えてないような怠け者の癖に……」
「そりゃごもっとも」
余裕ぶって答えると、加賀美はがりがりと頭を掻いてから、こう言った。
「まぁいいや。とりあえず帰ろうぜ」
特に断る理由もなかったので、頷いた。
……が。
「……待って、俺、弁当教室に忘れた……」
思わず苦い顔になる。取りに戻るしかないじゃないか、これ。
すると加賀美は楽しそうに笑った。
「はっ! バチが当たったな! んなら俺、先に帰るわ」
「はぁ? 加賀美、それくらい待っててくれてもいいだろ?」
言うと、肩をすくめて加賀美は答えた。
「もしお前が俺だとしたら、俺と同じこと言うだろ?」
「……まぁ、な」
考えてみたら、俺が加賀美だとしてもほぼ確実に先に帰っている。
側から見たら、仲が良いのか悪いのか分からないな、と苦笑いした。
「じゃーまたな! 明日はちゃんと機嫌直しとけよ?」
「あー、考えとく」
加賀美が背を向けて帰った後、俺はため息を吐いて教室へ戻ることにした。
ーーが、俺は教室に戻ったことによって、更にとんでもない面倒事に巻き込まれる羽目になったのだった。
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