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二人の夜 3☆
「……お前、一度自分で中を触ってみたらどうだ?」
「ええっ!」
「もちろん人によって前立腺の位置は違うから佳暁様とまったく同じというわけにはいかないが、自分のでも十分練習にはなるだろう。
幸い今夜なら、佳暁様には内緒で俺が教えてやることも出来るし」
「う、うー……」
聡の言うことは納得は出来るのだが、自分の中を触るのは少し怖い気がする。
今までだって何回も佳暁様の中を触ったし、自分のものだって入れているくせに何だとは思うが、やっぱり怖いものは怖い。
「……もしかして、聡も自分の中で練習したの?」
「いや、俺の場合は、最初に寝たのが慣れてる人だったから、その人に教えてもらったし練習もさせてもらったんだよ。
だから本当なら、お前も佳暁様に教えてもらった方がいいと思うんだが」
「う……それはちょっと……。
……わかった、佳暁様のためだし、がんばってみる。
悪いけど、聡、教えてくれる?」
オレがそう言うと、聡は神妙な顔でうなずいた。
「隣からローション取ってくる。
ちょっと待ってろ」
そう言うと聡は隣の佳暁様の寝室――というよりは四人の寝室になっている部屋に行って、ローションやコンドームや後ろを触るときに使う指サックが入ったカゴを持ってきた。
昼間のうちにオレがいつものように中身を補充しておいたので、それぞれ十分な量が入っている。
聡が戻って来たので、オレはズボンと下着を脱いでベッドにあがった。
聡には毎日のように裸を見られているが、四人でセックスをする時以外に脱ぐのは初めてで、ちょっと恥ずかしい。
聡がタオルを貸してくれたので、前はそれで隠して聡にお尻を向ける形で横向きに寝転ぶ。
「とりあえず、一本でいいから指入れて、前立腺を触る前に中を広げてみろ」
「うん、わかった」
聡が渡してくれた指サックをはめてローションで指を濡らし、思い切って自分の後ろに指を伸ばした。
佳暁様にそうしているように、周囲から優しくほぐして、柔らかくなってきたらゆっくりと指を入れる。
自分の中に指が入っているのは、何ともおかしな感じだった。
佳暁様は指を入れただけでもかなり感じているように見えるが、正直感じるという感覚にはほど遠い。
それに自分の指の方に感じる感触も、佳暁様のものとはかなり違う感じがする。
佳暁様の中は触ったりアレを入れたりすると、うねったり締め付けてきたりするのに、オレの中は熱くはあるが中が動いている感じはしない。
それはやっぱり、佳暁様が長年男の人に抱かれ続けてきて、抱かれるのにふさわしい体に変化しているからかもしれないと思う。
「そろそろ大丈夫だろうから、前立腺も触ってみろ」
聡にそう言われたので、前立腺があるあたりを探りながら触ってみる。
「っっ!!」
自分の中の前立腺を探り当てた途端、体中に電流が走ったような強烈な快感がオレを襲った。
「うわー……すごいね……」
初めて感じる快感だからということもあるのかもしれないが、それは本当に人生観が変わりそうなくらいに、強烈な体験だった。
佳暁様はいつもこんなふうに感じているんだと思うと、何だか感動すら覚える。
「確かにオレ、こんなふうには佳暁様のこと感じさせられてなかったかも……」
聡や護に抱かれている時の佳暁様はきっとさっきと同じくらい感じているのだと思うけれど、自分の時はどうかと考えるとちょっと自信がない。
オレがそう言うと、聡は慰めるように僕の頭をちょっと撫でてくれた。
「それが自覚できれば十分だ。
その感覚を忘れずに佳暁様を抱く時に活かせれば、きっと佳暁様に喜んでいただけることが出来る」
「うん、ありがとう。
あ、けどせっかくだし、もうちょっと練習してみていい?」
僕がそう言うと、聡はしばらく沈黙した後、「ああ」と言った。
「そうだな、教えてやるって約束したことだしな」
その時のオレが、聡のまるで自分に言い聞かせるかの言葉の意味と、その前の不自然な沈黙の意味に気付いていたら、もしかしたらあんなことにはならなかったかもしれない。
けれどのその時のオレは、もっとセックスがうまくなりたいという気持ちと初めて知った快感とで一杯一杯になっていて、聡の気持ちなど考える余裕もなかった。
「どうやって触ればいいか、教えてやる。
俺の指も一緒に入れるぞ」
「あ、うん。お願い」
オレがうなずくと、聡は指サックとローションで準備をして、オレの手の甲を軽く握ってオレの指に沿わせる形で中に指を入れてきた。
二本目の指が入るとかなり苦しい感じがしたけれど、そうやって中がいっぱいになる感じがちょっと気持ちいい気もする。
「そうだな、この辺りをこういう感じで擦って……」
「あぁっ…!」
聡がオレの指に重ねた指を動かし始めると、途端にさっき以上の快感が襲ってきた。
実際に触っているのはさっきと同じオレの指なのだが、聡の動かし方がうまいのか、頭が真っ白になるくらいに気持ちよくて、聡が説明してくれているのも全く頭に入ってこない。
前を隠しているタオルの中で、自分のものがどんどん大きく固くなっているのがわかる。
それどころか、このままでは前を触ってもいないのにイッてしまいそうだ。
「ご、ごめん、聡、オレやばい。
もう無理だから、指抜いて」
オレが息も絶え絶えにそう頼むと、後ろで聡が息を飲む音が聞こえた。
えっ、と思うまもなく、聡とオレの指が一緒に中から引き抜かれ、聡がオレが横になっているベッドの上に上がってきた。
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