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実験 2★
聡は深夜遅くに帰ってきて、そのまま自分の部屋で寝たようだ。
翌朝、朝食を食べに降りてきた聡は、二日酔いらしくいつもよりも眠そうだった。
先に聡にだけ水を出してやると、聡は「ありがとう」と言ってちょっと微笑んだ。
その笑顔を見ると何となく後ろめたいような気がして、オレは返事もせずに作業に戻る。
「……健太、どうかしたのか?」
明らかにおかしいオレの態度に、聡が不審そうな声を上げると、佳暁様がぷっと吹き出した。
「ごめんごめん。
でも、それについては後でね。
あ、健太にも聞いちゃ駄目だからね」
「……わかりました」
オレの態度を不思議に思いつつも、佳暁様にそう言われては聡もそれ以上追求することは出来なかったらしい。
笑われたことはともかくとして、佳暁様のフォローはありがたく、オレはそのまま作業を続けた。
そうして、昼間は出来るだけ聡と顔を合わせないようにして過ごし、夜になった。
いつものように佳暁様の寝室に集まり、裸になってベッドに上がると、佳暁様はなぜか護を自分の方に呼び寄せた。
「比べてみた方がわかりやすいでしょ?」
オレが不思議そうな顔になっていたせいか、佳暁様はそう説明してくれた。
「あ……はい」
オレはうなずきながらも、後ろの聡が今のやり取りをどう思っているのかと思って不安になってしまう。
隠し事をされていらだっているのか、オレに触れる聡の手つきはいつもよりも心なしか乱暴な気がする。
いつものように向き合った佳暁様と触れ合い、後ろの聡に触られて、徐々にたかぶっていった体が太いモノを欲し始めた頃、佳暁様がオレに軽く口づけてから言った。
「そろそろ、試してみる?」
「あ……はい」
少し躊躇しながらもうなずくと、後ろの聡が少しいらだったような声で言った。
「佳暁様、試すとはいったい?」
「うん、実はね……」
「あ、待って下さい。オレから言わせてください」
少しでも聡に悪いと思っているなら、ここは佳暁様に任せずに自分で話すべきだろうと、オレは佳暁様をさえぎって、聡と向かい合うように座り直した。
「あのね、オレ、いいかげんそろそろ聡の告白に答えなきゃいけないと思って、夕べ佳暁様と護にそのことを相談したんだ。
そうしたら二人とも、オレはすでに聡のこと、その、好きなんじゃないかって……、それがわからないなら、試しに護に抱かれてみて、聡の時と比べてみたらわかるんじゃないかって言われて……。
でも、あの! 聡が嫌だったら、やっぱりやめておくけど……」
「……なるほど、そういうことか。
それで健太、お前はどうなんだ。
佳暁様に言われたからということじゃなく、お前自身も護に抱かれたいと思うのか」
聡自身の口から改めてそう聞かれると、やっぱりまだ、自分の中にためらいがあることに気付かされる。
それでもオレは、聡に今の正直な気持ちを話すことにする。
「正直、護には抱かれても抱かれなくてもどっちでもいいんだけど……」
と言いかけて、それはそれで護に失礼だと気付いて護に「ごめん」と謝ると、護は「気にするな」と言ってくれたので話を続ける。
「でも、それでオレ自身の聡に対する気持ちがわかるかもしれないっていうのなら試したい。
だって今まで自分一人でずっと考えてきたけど結局わからなかったから、このままだと何年も聡のこと待たせてしまうかもしれないし……」
「そうか……わかった。
オレは平気だから、健太が試してみたいならやってみろ。
その代わり、もし少しでも嫌だと感じたら、すぐにやめてくれ。いいな?」
「うん、わかった」
オレと聡の話し合いが付いたのを見て、護がコンドームを取って準備を始めた。
佳暁様は少し離れて見守ってくれるつもりなのか、ベッドの端へと移動する。
「護、お願い」
オレが声を掛けると、護はうなずいてオレを抱きかかえた。
聡と比べると護の腕は太くたくましい。
横向きになったオレをその太い腕でしっかりと抱えながら、護は太い指でオレの中を探る。
あらかじめ風呂で準備してあるし、さっき聡にも少し触られたので、その中はすでに柔らかくなっている。
「入れるぞ」
「うん」
オレがうなずくと、聡はオレを後ろから抱きかかえ直した。
そうすると、すぐ側でこちらをじっと見ている聡と目が合った。
食い入るような目でオレを見ている聡を見ると、胸をぎゅっとつかまれたような苦しさを感じる。
「んっ、あぁー……」
オレが聡に気を取られている間に、護がオレの体を少し持ち上げて後ろからゆっくりと入って来た。
受け入れたことはなくても毎日見ているから知っているが、護のモノは聡ほど長くはないが聡のよりも太い。
その太いモノが中を押し広げていく感覚は強烈だった。
聡と話をしている間に少し萎えてしまっていた自分のモノが、中をこすられる快感にまた勃ち上がったのがわかる。
護はオレの中に全部を収めきると、下からオレを突き上げ始める。
すごい。
中をいっぱいにされて、力強く突き上げられて気持ちいい。
それは確かなのだけれども、それなのにオレはなぜかその快感に夢中になることは出来なかった。
聡がすぐ側で護に抱かれているオレを見ているせいで集中できないというのもあるだろう。
でもそれだけではない。
違和感、とでも言えばいいのだろうか。
自分でもうまく説明出来ないけれど、何かが違う気がして快感だけを追うことが出来ない。
いったい、何がどう違うというのか。
護と聡、それに佳暁様はそれぞれ別々の人間で、アレの大きさも形もやり方も違うのが当たり前なのに、初めて受け入れた護には、なぜか聡にも佳暁様にも感じなかった違和感を覚える。
オレがよっぽどおかしな顔をしていたのだろうか。
それまで見ていただけだった聡が、腰を浮かせてこちらに手を伸ばしてきた。
そうして心配そうに「健太」と呼びかける声と共に指先で触れられると、なぜだか泣きそうな気持ちになった。
そのくせ、聡に触れられた途端、妙に安心してしまったのも事実で、そこでようやく、オレは自分の本当の気持ちに気付いたのだった。
違うと感じたのは、間違っていなかった。
けれども、違うのは護ではなくて、むしろ聡と佳暁様の方だったのだ。
佳暁様を違和感なく受け入れているのと同じように、聡を受け入れることに違和感を覚えていなかったオレは、自分でも気付いていなかったけれども、聡のことを佳暁様と同じように大切に思っていたのだ。
護のことも仲間として好きだけど、聡に対する好きは護に対するものとは違う。
「ごめん、護。もういい」
自分の中で答えが出た以上、聡にあんな顔をさせてまで続ける必要もなくなったので、護にそう声をかけると、護は「ああ」と答えて動きを止めてくれた。
護に支えてもらいながら腰を浮かせて体の中から護のモノを抜くと、なんだか急に力が抜けて、オレはその場にぺたりと座りこんでしまった。
「びっくりした……」
偽りなく、それがオレの今の素直な気持ちだった。
「オレ、ちゃんと聡のこと好きだったんだ……」
誰に聞かせるつもりでもなくそう呟くと、いきなり側にいた聡に抱きしめられた。
「ちょっ、聡!」
慌てるオレには構わず、聡は佳暁様の方を向いた。
「申し訳ありませんが、今夜はこれで失礼してもよろしいでしょうか」
「えっ」
「うん、いいよ。
明日は二人とも昼から出てきてくれたらいいから」
「ありがとうございます」
「えっ、ちょっと待って」
聡はベッドから降りて慌てているオレをかつぎあげると、さっさとドアの方へと歩き出した。
「す、すいません! 佳暁様」
「失礼します」
どうにか佳暁様に謝ったオレをかついだまま、聡は佳暁様の寝室を出て、聡の部屋の方へと向かった。
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