7 / 20

糸を張る蜘蛛_肆

 泣きながら嫌だという恒宣に、止める事無く快楽を与え続け溺れさせ、貪るように体を奪い、気を失うまで中を突いた。  白濁で汚れた体をぬるま湯で拭い、藤色の着流しを着せる。  自分の身体を適当に拭いた後、先ほど目に焼き付けた恒宣の淫らの姿を描いていく。  どのくらい没頭していたか、傍に立つ人の気配を感じて我に返る。 「起きたのかい」 「あぁ……」  ちらっと見ただけだが顔色が悪い。  畳の上に散らばる絵を見たのか、恒宣がはっと息を飲む音が聞こえた。 「こ、これは、私、なのか?」  と、声を震わせる。  丸メガネの色気のある男が、口に後ろにと巨根を咥えている、そんな絡み絵が数点。  後は精で濡れて恍惚とした表情を浮かべる姿や、着流しを淫らに着崩し、舌を出している姿……。  犯された挙句に淫らな姿を描かれているのだ。これで完全に嫌われただろう。  藤は絵をかき集め、そして真っ青な顔色をしている恒宣の手から絵を取り上げて、 「これで俺って男がわかっただろう?」  という。  最低だと罵り部屋を出ていく、そう思っていたのに。 「お主の、なにを、知ったというのだ?」  震える自分自身を抱きしめながら、それでも真っ直ぐにこちらを見ていた。  あんな真似をした男なのに、まだ嫌わないでいてくれようとしているのか。 (俺には勿体ねぇ人だ)  こんなどうしようもない男と一緒にいたらいけない。  だから余計に相手を傷つけるような態度をとる。 「初物だと知って、おめぇを食うような男だぜ、俺は」  腕を伸ばして恒宣の尻を掴んで揉む。先ほどまで藤のモノを咥えていた所を指で撫でれば、 「ひやぁっ」  と声をあげて腰を浮かす。 「中に突っ込んでやったら、あんなに善がっちゃってよ」  クツクツと笑って見せれば、恒宣は羞恥に顔を赤く染め、藤の頬を思い切り叩いた。 「いてぇな……」 「最低だな、お主」  藤の頬を叩いた手を握りしめながら涙を浮かべる恒宣に、 「二度と此処には来るんじゃねぇッ」  そう言い放ち、出ていけとばかりに手を払う。 「邪魔をした」  涙を拭い藤から視線を外すと、藤色の着流しを着たまま恒宣は家を飛び出していった。  本気で落ちる前に彼を遠ざけた。しかも最低なやり方でだ。  綺麗に畳まれた恒宣の小袖と袴を手にとり抱きしめる。 「すまねぇ……」  恒宣の姿を思い浮かべながら藤は静かに涙を流した。

ともだちにシェアしよう!