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囚われたのは蜘蛛の方_貮

「そうか。なら、良い」  呆気なくそう言い放つ恒宣に、藤の方が焦ってしまう。 「な、良いって、あんた、何を!」 「お主が私の事を好いてくれていることがすごく嬉しいのだ。だから私もお主の事をそういう意味で好きなのだろうな」  ふふっと笑うと、恒宣が藤の手をとり自分の頬へと当てる。その行為に目を開き、藤はたじたじとしてしまう。 「愛おしいよ、お主が」  そういうと、そのまま手の甲に口づけを落とした。 「な、なっ」  藤は頬を赤く染めてあたふたとしはじめる。そんな姿に微笑む恒宣だ。 「おや、意外と可愛い反応をするのだな」  そういうと恒宣は顔を覗き込んで藤の頭を撫でた。 「く、黒田さんっ!!」 「なんだ、別に恒宣と呼び捨てで構わないぞ?」  何時だったか名で呼んだよなと言われ、あの時は咄嗟にそう呼んでしまっただけだと言い返す。 「でも私は藤に名で呼んでほしい。黒田では他人行儀に聞こえる」  とそう言われて躊躇いつつも解ったと了承した。 「つね、のり」 「ふふ、なんだ?」  やたら嬉しそうな顔をするものだから、藤はたまらなくなって恒宣の唇へと口づけた。 「ん、ふじ……」  首に腕を絡めて舌を絡めあう。 「はぁ、もっと欲しいよアンタが」 「うむ、そうだな……、ひとまず家に来ないか? 此処では人の目がある事だし」  恥ずかしそうに顔を伏せる恒宣に、そうだったと頷く。 「じゃぁ、寄らせてもらうわ」  では行こうと恒宣が藤の手を握りしめてその手をひく。  そのまま二人は黒田の屋敷へと向かって歩き出した。

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