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Lv.2ハラン
ハランは土の神の加護を受けるエストーニア王国に所属する冒険者で、国から認定を受けた職をいくつか手にしているが現在はナイトとして働いていた。
常に重厚感のある鎧を身に付け、仲間の盾となり守り戦う職業だ。
この日は他国の新人冒険者を援助する仕事を遂行するため、風の国、ウィンディア共和国に足を運んでいた。
何ともないと思えるような小さな仕事をコツコツと積み重ねることで、自分の評価がどんどん上がっていくのだから、くだらない仕事だろうがバカにはできない。
ハランはイジー草原に下り立ち、ウィンディア共和国の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
いつ訪れてもここは空気が澄んでいる。
それに特段危険なモンスターもいないし平和なエリアといえるだろう。
ハランは早速仕事に取り掛かる。
新人の冒険者探しだ。
新人の援助だなんて簡単な仕事だと思っていた。
しかし気軽に請け負ったはいいが、探してみるとなかなか新人の冒険者が見つからない。
それもそのはず、新人は熱心に仕事をするので、すぐに新人ではなくなってしまうからだ。
今日で新人探し3日目。
今日こそはと気合いを入れる。
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「なかなかLv.5以下のプレーヤーなんていねぇよな。……あ、こいつ、Lv5。ケント」
PC画面の前で、原田宗太(ハラダソウタ)は呟いた。
ケントはグールに追われ、一方的に攻撃されて瀕死の状態で救援要請を出している。
「よし、助けるか」
**********
「プロテクト……!」
ハランはナイトの特殊能力を解放しながらケントへと近付いていく。
ハランの解放したプロテクトという能力は対象とした冒険者の身代わりとなって、受けるダメージを自身が肩代わりするというものだ。
こいつが死んでしまっては新人冒険者をまた一から探す羽目になる。
それは正直かったるい。
無言で横入りしたハランにグールが気付き、グールの攻撃目標はハランへと移された。
ハランは剣を抜き何の躊躇いもなく振り下ろす。
グールは呻き声を上げる間もなくその場に倒れた。
「大丈夫?」
放心状態の新人冒険者に手を差し伸べ、立ち上がるのに手を貸した。
怖かったのだろう。指先が微かに震えている。
握ってわかった自分より華奢な手。
─女か?
ケントは立ち上がると衣服についた土埃を手で払う。
その後互いに自己紹介をして、ハランがケントの仕事を手伝おうかと提案するとケントは満面の笑みで頷いた。
「ケガしてるな。ちょっと待て、動くなよ。……キュア!」
ハランは回復魔法を唱える。
するとケントが仄かに白い光に包まれ、その光は空に散らばり光の粒となって消えた。
「わ、ケガなおってる……!ありがとう!ハランすごいね。前衛で戦う職業なのに回復魔法も使えるんだ」
ケントはハランを見詰め首を少し傾げて笑顔を見せた。
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