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Lv.3筑波健人
筑波健人(ツクバ タケト)。櫻田学園高等部2年3組に所属する、ごくごく一般的な普通の男子高校生だ。
だがそう思っているのは健人本人のみである。
「またかよ……」
健人は眉をしかめて目の前にある自分の下駄箱を睨み付けた。
大学まで附属するこの学園に健人は中等部から通っている。
中等部の頃は、まだ周りにも健人のような声変わりもロクにしていない小学生と見間違えるような幼さの残る友人が多くいたが、日が経つにつれ、そんな友人たちも男臭さを兼ね備えた大人の姿に一歩ずつ近付いていく。
しかし残念なことに、健人には未だ目に見えた成長期が訪れないままだ。
高等部に入ってからのあだ名は『姫』だっ た。その由来は男子校では人目を引くある種異色な健人の存在から。
女子も羨みそうなきめ細やかな肌に艶のある黒髪、ぱっちりとした目は黒目がちで小ぶりな鼻も愛らしい。
こんな見た目のせいでついたあだ名が姫だ。
─俺進学するとこ間違えたのかなぁ。
頑張って中学受験したものの、まさかこんなことになるなんて。
健人は溜め息を吐いて下駄箱に納められたラブレターと思われる複数の封筒を手に取り、即座にグシャッと握り締め、バンと音を立てて勢いよく下駄箱の扉を閉めた。
「クソヤロウ。どいつもこいつも死ねよ」
ただ、健人は愛らしい外見とは裏腹に口が悪く気が強かった。
男が男にモテるとか、同性同士の恋なんて不毛過ぎる。
健人はかなりこの男子校での恋愛事に対して冷めていた。
そんな健人がlostworldに出会ったのはほんの数日前。
lostworldは大人数参加型オンラインロールプレイングゲームである。
火、水、風、土、そして魔の神々の抗争により分断された大陸を一つに戻すべく、各プレイヤーが主人公となり様々な試練を乗り越えて行くというのが大まかなストーリーだ。
健人がこのゲームを始めたのにはきっかけがあった。
ゲーム好きな親戚の叔父からこのソフトをもらい受けたのだ。
どうやら叔父は自分が欲しくてこのゲームを買ってみたものの、プレイしてみると思っていたより低年齢層向けで自分には合わないと感じたそうだ。
健人はそんなにゲームが好きな方ではなかったが、始めてみると自分自身が異世界を冒険しているような、そんな気分になり、どんどんlostworldの世界へのめり込んでいった。
楽しい!面白い!どんどん引き込まれていく。
健人の今一番の楽しみは、lostworldの世界で冒険することだった。
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