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第10話
「え!何適当なこと言ってんだよ!……和也、まっ……」
片手で謝るポーズを取りながら、和也は人気のない方へ走って行ってしまった。
「なんだよ、うんこ野郎!この薄情もの!」
とは行っても、腹痛なら仕方ない。
さっさと行って、さっさと断ろう。
そう考えて健人は足早に中庭へ向かった。
南校舎と東校舎を繋ぐ渡り廊下の途中に中庭への扉があり、その中へ入るとベンチに噴水、様々な花々や木々で中庭が彩られている。
木の陰に隠れれば、誰にも見られず告白できるし雰囲気もそれなりなので、中庭は人気の告白スポットとなっていた。
中庭へのドアを開け、足を踏み入れる。
すると、ベンチに誰かいた。
─まさか、あいつか?
遠目から見てもわかる、シルバーグレイの 髪。
だらしなく着崩された制服は健人とは違う部類の生徒と認識できた。
─どこからどう見ても、不良……だよな。
えー……まさか俺不良に告白されるのか?
健人は思わず近くの木の影に身を潜めた。 相手が不良だったなんて完全に想定外だ。手紙なんて見なかったことにして帰ってしまえばいい。そうしよう。
そう思ってクルリと踵を返したその時、ぐっと強い力で手首を掴まれた。
「痛っ……!」
「筑波くんだよね、来てくれてありがとう」
「……あ、いえ」
銀髪の男じゃなかった。
ほっとしたのも束の間、健人を掴む男の力は一向に弛むことなく、聞きたくもない愛の告白が始まったのである。
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