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第12話

直ぐに大柄な方が郷田、小さい方が筑波だとわかった。 「てことで郷田さん、悪いけど俺戻ります ね」 くるんと筑波が身を翻し宗太のいる方へ歩いてくる。 宗太は覗いていたことを悪びれもせず、木の影からひょいと顔を覗かせた。 男に告白されるなんてどれだけの美少年なのか、確認してやろうという好奇心に駆られたのだ。 宗太は、はっとした。 筑波と呼ばれていた生徒は、真っ黒でサラサラの黒髪を風に靡かせ、吸い込まれそうな黒目がちの大きな瞳の美人だったからだ。 男に美人と形容するのはおかしいかもしれないが、宗太の目にはキレイに映ったのだ。 一瞬目を奪われたが、しかし、同じ学年にあんな奴いたか?と首を傾げた。 こちらへと歩みを進める筑波は宗太の存在に気付きビクッと身体を震わせた。 「……っ!」 しかし宗太とは目を合わせないように顔を背けて通り抜けて行く。 宗太は不思議に思った。 ─どこかで会ったことがあるような気がす る。 気付くと宗太は筑波に声をかけていた。 「なあ、あんたどこかで会ったことある?」 「……っ!」 筑波は立ち止まり恐る恐るといった様子で恐々と振り向いた。 「な、……ない」 「あぁ、ナンパしてるわけじゃないから」 警戒されているのが分かって思わず弁解めいたことを言ってしまった。 視線を下へ落とすと、筑波の上履きが見えた。ラインの色が違う。同学年じゃないと気が付いた。 「あれ、あんた年上?」 「っ!」 宗太がそう聞くと筑波は真っ赤になって無言で校舎の中へ行ってしまった。 どうやら図星だったようだ。 これが筑波健人と原田宗太の出会いだった。

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