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第15話
「あー、そうなんだ。何か可愛いからてっきり女の子かと思ってたんだけど。ごめん」
「別にいいけど……。仕事相手は俺でいいの?」
「ん?なんで?」
「だって……。ジンは酒場で女の人にばかり声をかけていたから」
「げ、それ誤解!誤解だから!俺はヒーラーを探してたってだけで!」
「嘘だぁ。ほんとに?」
「え、いや、やめて!僕が無類の女好きみたいに言うの」
「違うの?」
「違うしー」
「じゃあ仕事は続行でいいんだよね?俺、男だってバレたらこの仕事から干されるかと思ってた」
「そんな鬼畜なことするわけないじゃん。ひどいなぁもう。僕傷付いた」
「え、あ、ごめん」
「……ケント」
ジンがぶすっとした表情でケントに向かって手招きする。
「ん?」
「もっと僕の近くに寄って」
一体どうしたというのだろう。
もしかしたらガラスの花採集に関係のあることかもしれない。
そう考えてケントは更にジンとの距離を詰め、ジンの胸にケントの額がくっつくあと数センチというところまで接近した。
「こう?」
「うん。ケントーっ!!」
「わぁっ、んむっ!」
ジンはケントをぎゅうっと抱き締める。
まさかそんなことをされるとは考えてもみなかった。
軽く脳内パニックに陥り、思わずケントは両腕を伸ばしてジンを押し退けようとした。
「僕を傷付けたんだから慰めて!」
ジンはケントを抱き締めただけでは飽きたらず、頬に頬を寄せてくる。
「うあっ、ちょっ、やめっ!ごめんって!」
流石にそこまでされると鬱陶しいが、力で敵う相手ではなく、ケントはしばらくされるがままになっていた。
「ケントの大きさ、僕の腕にちょうど収まっていい感じだなぁ。男の子だけど可愛いし」
ぞぞっとケントの背筋に悪寒が走る。
「ちょっとジン!そろそろ仕事の本題に入ろう!俺、あまり時間なくて!」
「ちぇー、わかったよ。抱き心地よかったのになぁ」
「抱き心地って……」
色々とジンに聞いてみたいことはあったが、ケントの都合を話すとようやく手を離してもらえた。
「じゃあ早速あそこから谷に降りよう」
「うん」
「足元、苔で滑るから気を付けて。ケントに怪我されたら回復できる人いなくなっちゃうからね」
「わ、わかった」
責任重大だ。
─頑張らなくちゃ。
ケントはジンの後に続いて、谷へ続く急な坂道を下っていく。
道と呼べるのかもわからないが、辛うじて人一人が通行できる道幅だ。
一歩間違えれば、谷へ真っ逆さまである。
慎重に歩を進め、暫く行くと、谷底がようやく見えてきた。
仄かに青白い光がカーペットみたいに敷き詰められている。
「これこれ、ガラスの花」
「すごい。すごく綺麗だね!」
草原の深淵に咲くガラスの花は確かに高額報酬の価値があるとケントは感心した。
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