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Lv.6ハラン
ハランは希少モンスターを狩るギルドのリーダーだ。
ギルド名はwanted。
賞金首となりそうなイメージのプレイヤーの集まりからそう名付けられたらしい。
ハランは前期リーダーからその役目を引き継いだ。
希少モンスターはその存在も出現率も全てがレアだ。
故に他のギルドとモンスターの奪い合いになることも多い。
その奪い合いに勝って初めてモンスターとの戦闘に進むことが出来るのだが、ハランは俗に言う“釣り”と呼ばれる希少モンスターを自分のパーティーへと誘導する行為が他の冒険者と比べて格段に上手い。
そしてそのモンスターを確実に仕留め、そのモンスターの素材から成るレアなアイテムを必ず獲得するのだ。
そんなハランにいつしか付いたあだ名はキングだった。
この日はウィンディア共和国イジー草原の湖付近で、巨大なアオムシの希少モンスターを狩る予定だった。
「相変わらずカップルばかりだなここは」
思わずハランは呟く。
やりにくいと思ってしまう。
巨大モンスターとの戦闘が始まると周辺の無関係な冒険者達をも巻き込み、彼らに多大なダメージを与えてしまう恐れがあるからだ。
他の冒険者を巻き込む恐れがあったとしても、リーダーであるハランはギルドの活動を最優先にしなければならない責任があった。
心を鬼にして周辺のカップルを追い出し、この狩場を自分達が占領しないことには戦闘を始められない。
「これからこの場を、俺たちwantedが占領する!部外者は即刻ここから離れるように!」
ハランは先頭に立ち声を上げた。
すると事情を察した冒険者達は、次々とこの湖を後にする。
「おーい」
「……?」
去り行く人々とは逆に、この狩場へ近付いてくる人影を見つけた。
よく見るとこっちへ向かって手を振っている。
ギルドメンバーのジンだった。
ジンの後ろには小柄な冒険者が見える。
「おーい、ハラン!」
「よぉジン。ジンもここでデートか?」
「あぁ、この子のこと?可愛いだろう。デート中って言いたいところだけど、この子男の子なんだよね。僕は別にそれでもいいんだけどなかなかガードが固くて」
「そうなのか」とハランは適当に相槌を打つ。
「ところでジンは参加しないのか?これからここにcaterpillarが出現する。できれば手伝ってほしいんだが」
「特に予定もないし、いいよ。ただこの装備じゃ足手まといだ。一度帰って着替えたいな」
「わかった。待ってる」
ハランがそう返事をするとジンは後ろにいた小柄な冒険者に顔を向けた。
「ごめんね。僕が戻ってくるまで待ってて。あ、そうだ。ハランの後ろに居れば絶対に安全だから、ハランの側から離れないでね。ハラン、少しの間、この子をよろしく」
そう言い残してジンは軌跡の石と呼ばれるアイテムを頭上にかざす。
その石には行きたい場所へと連れて行ってくれる、なんともありがたい奇跡のような効果があった。
ジンはあっという間にそこから姿を消した。
ハランは急に任されたジンの連れに目を向けた。
ジンの連れは何もしゃべることなく近くに佇んでいる。
─街まで送った方がいいのか?
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