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第20話
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「ハラン、俺本当にここいても平気?」
駆け出しの身がここにいては場違いなのではと思っているのだろう。
ケントの不安気な表情がハランの胸を甘く絞る。
「あぁ。後ろから離れないでくれ」
「う、うん!」
「……っ」
ハランは堪らず不安そうなケントを自分の胸に引き寄せた。
「ハラン?」
そのまま腕の中のケントに力を籠める。
抱きしめられているというのに、ケントは逃げなかった。
「ずるいっ、僕もケントのことハグしたい!」
ジンがすぐ傍らでハランとケントにズルいズルいと繰り返した。
─俺は一体何を……?
ケントが逃げないことにも驚くが、それ以前にどうしてケントを抱き締めてしまったのか、ハランは自分自身が理解できなかった。
数分後、希少モンスターcaterpillarが現れ、戦闘が始まった。
ハランのドラゴンが他のパーティーよりも格段に早くcaterpillarに攻撃を仕掛ける。
今回もハランの釣りは成功した。他者よりも圧倒的に早い。
何よりケントが後ろで見ている。だから絶対に失敗はできないと思っていた。
その後魔導士がcaterpillarをすぐに魔法で眠らせ、徐々に弱体していく魔法をかける。
攻撃と魔法の連携プレーであっという間にcaterpillarは弱っていった。
体力が減ってくるとcaterpillarは範囲攻撃を始める。ハランが恐れていた攻撃パターンだった。
しかしケントはぴったりとハランの背中について回り、ハランは背にケントを庇いながら戦うことができた。何度か危ないシーンはあったがパーティーの危機は訪れず、無事戦闘を終えることができた。
ケントが無事か気になって、ハランはすぐにケントをチェックした。ステータスの異常、 低下は見られずホッと胸を撫で下ろした。
「ハラン!すごいな!いつか俺もやってみたい!」
「あぁ。ギルドで待ってる」
ハランはそう言いながら、離れた場所でも意思の疎通を取ることができるリングジュエルをケントに手渡した。
時間を共にする程、もっと話したい、もっと一緒に過ごしたいと欲が出る。
こんな感情をこの世界で特定の相手に抱いたことはない。
ケントの存在は、ハランの中で特別なものに変わろうとしていた。
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