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第26話

赤い顔した健人が言った。 唐突にタマゴサンドでいいかとは、どういうことだ。 「は」 「だから……礼だよ。助けてもらったお礼。タマゴサンド購買で人気あるし美味いから。だめ?」 タマゴサンドは大好きだが。 健人はテンパっているのだろう。 繋がれた手も振り解かずに、昼飯の話をしている。 だがもう昼休みはとっくに終わっていた。 「じゃあ礼ならこれでいい」 赤い果実みたいにぷっくりとした艶のある唇に吸い寄せられるように、宗太は少し屈んで健人の唇にそっとキスをした。 なぜそんなことをしたのか、そんなことはわからない。 頭で考えるよりも本能が健人の唇を欲したとしか説明のしようがなかった。 軽く合わせただけの唇を離すと、健人は耳まで真っ赤にして口をはくはくとさせながら宗太を見ている。 それがズクズクと宗太の中の何かを掻き立てた。 「先輩、スマホ貸してよ」 硬直している健人の制服を漁ってスラックスのポケットから健人のスマホを取り出すと、自分のスマホと合わせて情報を通信する。 「これでよし。今度から呼び出しあったら俺を呼べよ」 強引なのはわかっている。 だが、繋いでおきたかった。 何を……? 自問自答するが、わからない。やっぱりこれは本能的な何かだ。 喧嘩の楽しさ、興奮。 久々に味わった痛み。 そしてこの人、健人。 健人は引ったくるように宗太の手からスマホを奪うと、「ううっ」と唸りながら階段を駆け下りて行った。

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