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第29話
─これを着てパーティーか。楽しそうだな。
手にしたコスチュームを広げてみる。
丈の短い可愛らしいデザインだ。
これでユニセックスなのかと笑いが込み上げてくる。
強堅な体つきの冒険者がこれを着たんじゃきっとアンバランスな見た目になってしまいそうだ。
「ふふっ……、……」
─ハラン、どうしてるだろう。
ケントはふとハランのことを思い出した。
周りの冒険者たちは仲間と呼び会える者同士でパーティーを組み、わいわいと賑やかに楽しそうにして過ごしている。
自分にはまだそんな仲間はいない。
─ハランに会いたいな。
唐突に込み上げてくる寂しい感情。
なかなか会えない遠くの友達キングは、雲の上の人。
そんな風に感じてしまったから。
─俺ももっと身近な同国の友達が欲しいな……。
と思ってはみたものの、友達のつくりかたがよくわからない。
どこの世界でも同じだが、あまり親しくない者とのコミュニケーションの取り方がよくわからず難しい。
加えてこの世界では、もっと時間を費やさなければ強くはなれないし、もっともっと広い世界で冒険をすることは非常に難しい。
戦闘のスキルも低ければ、お金もないので良い防具や武器を買うこともできない。
こんな自分では一緒にパーティーを組んでくれる仲間を見付けるのはまだまだ先のことになるだろう。
ハランやジンのようにこの世界で高見を目指すのは無理かもしれない。
この時点でこっちの世界へのある程度の諦めがあった。
それにもともとの性格が災いしているのだろうが自分から知らない誰かに話し掛けるということは、ケントにとってとてもハードルの高いことで、勇気のいることだった。
─もっと積極的にならなくちゃ……。わかってる。わかってるんだけど……。
そんな事を考えつつも、また次の装備を獲得するためジャックオーランタンに挑む。
「うわぁっ!こいつ強いっ」
運の悪いことに炎を吐くレアなカボチャに当たってしまったらしい。
これをマチルダのところへ持っていけば、更に良いアイテムと交換してもらえそうな気がした。
しかしこのジャックオランタンは強い。
「は、はぁっ……、嘘……、なんでこいつ倒れないの」
ケントの呼吸が荒くなる。
攻撃を受けては自分を魔法で回復しての繰り返しで全く戦闘にならない。
あっという間に体力も気力も削られていく。
「ねえ、手を貸しましょうか?」
ケントの近くを通りがかった魔導士が親切に声をかけてくれた。
金髪ツインテールの髪型で黒い魔導士の服。
黒魔導士の女の子だ。
「お願いします!」
攻撃をメインとしている魔導師に加勢してもらったが、なかなか手強く苦戦を強いられた。
それを見兼ねた通りがかりの冒険者達が次々と参戦してくれて、それからジャックオランタンが倒れるまではあっという間だった。
「よし!倒したぞ!」
「皆さん、ありがとうございます!」
「いえいえ」
「頑張れ新人!」
友達がなかなか作れないと気落ちしていたケントだったが、ピンチになるとこの世界の人達は助け合う。
共に戦った時間はすごく楽しく、その優しさがとても嬉しかった。
しかしケントの気持ちは浮き沈みを繰り返す。
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