30 / 138
第30話
***************
楽しいはずのハロウィンイベントも何だか気分が乗らない。
「はぁ……」
やっぱりあんなことがあったせいだ。
脳裏には原田宗太の顔が浮かぶ。
健人は無意識にキーボードから離した手を唇へ持っていった。
その指で唇をそっと撫でる。
長身の宗太に覆い被さられ、重ねられた唇は思いの外温かかった。
しっとりとしていて、綺麗なサーモンピンクで色気があって……。
─って、なに考えてんだ俺!
健人は我に返った。
きっと自分は疲れているに違いない。
今日はもう落ちようかと考えたその時、画面にチャットメッセージが表示された。
「……ハランだ!」
『ケント大丈夫だったか?』
ハランだった。
急激に気持ちが舞い上がる。
挨拶だけでもいいから話したかった。
『ハランおつかれ(^_^)/俺は大丈夫だけど、どうかした?』
ハランがケントを何か心配しているらしい。
何も心当たりがなかったので健人は首を捻った。
『何がって、ヘルプ出してただろ。カボチャと戦ってたのか?』
ハランの言うとおりだった。
ケントはハロウィンイベントのジャックオランタンに挑んだが勝てない相手とわかり、ヘルプと呼ばれる救援信号を出したのだ。
そのおかげで、道行くプレイヤー達が助けてくれたのだけれど。
『え?ヘルプって遠くの人にも見えるの?その場にハランはいなかったよね』
『フレの一覧見るとわかるんだ』
『そうなんだ』
なるほど、と健人は微笑み頷いた。
ハランが話しかけてきてくれたことがすごく嬉しくて、緩む頬を手で押さえた。
ともだちにシェアしよう!