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Lv.10ハラン

強引に男にキスしたり、連絡先を交換したり。 美人には違いないが相手は男なのに何をムキになってやっちまったんだろう……と、自分の妙な行動に首を傾げる。 ただ一つ確信したのは、健人を恋愛の対象として見たことだ。 あの時の行為は本当に衝動的だった。 「はあ……」 深く溜め息を吐いてPCを起ち上げる。そしていつものようにlostworldへログインした。 「……ハロウィンね」 何となく気分が乗らないままホームから出る。すぐにジンからのチャットメッセージが表示された。 『ハランおつかれ(*^ー^)ノ♪ハロウィンコスチューム取りに行こうよ~』 『ok』 『あ、そうだ。あの子も誘う?』 『あの子って誰』 『ハランのお気に入りの子w』 『ん?』 『ケント』 ドキッとしてチャットを打つ指が一瞬止まっ た。 「や……、いやいや」 ドキッとする理由がわからない。 宗太は頭を横に振ってキーボードを叩く。 フレンドリストのアイコンをクリックしてみるとケントはログインしている。 『ケントはオンラインになってるな。でも これって自国でしかやれないんじゃねーの』 『あ~そか。残念。んじゃ先にカボチャ狩ってるねw』 『おー』 ケントは今頃自分の国でハロウィンイベントに参加していることだろう。 ちゃんと楽しめているだろうか。 ─後で会いに行こ……。 すぐにハランはジンと合流してパーティーを組み、街中で暴れているジャックオーランタンを片っ端から狩り始めた。 *************** ジンとはゲームを始めた当初からのフレンドだ。 性格はおっとりと和み系だが、どういう訳か割と直情型のハランとは気が合った。 だからなのか戦闘での連携プレーも相性が良く、いつしか戦闘するには互いに欠かせない存在となっていた。 このイベントでのジャックオランタン狩りもすぐに終わりが見えた。 「いやぁ、これはないね。男の腹チラ。一体誰得」 ハロウィンカラーのトップスは丈が短く、ハランもジンもきれいに割れた腹筋が見えている。 どうにも見た目がアンバランスで、最早、変の一言で片付けてもいいくらいだ。 獲得したコスチュームについて、ジンは「ない。ダサい」を繰り返した。 これには大いに同意である。 隣でハランも黙って頷いた。 「このデザイン有り得ない」 いつもハイスペックで色鮮やかなレア装備を身に付けている長身の2人がこれを着ると何ともマヌケな感じである。 「女の子のは可愛いのにね」 「そうだな」 「何なの、この違いは」 2人は通りがかった女性の冒険者に目をやった。 オレンジと黒のハロウィンカラーがふんわりとした黒いオーガンジー生地に覆われてミニドレスに仕立てられ、背中にある悪魔の羽もマッチしている。 単純に可愛い。 あ、とジンが誰かに気付いて手を振った。 ギルドwantedの仲間、ミレーユだ。 彼女はブラウンの髪をポニーテールでまとめ、白いシースルーのケープを身に付けている。 ケープの下には青いチューブトップ。 その下にはふんわりとしたパンツを着用しまるでアラビアンナイトの姫のようだ。 因みにミレーユの職業は戦闘を機能的に盛り上げる踊り子である。 「やっほー。ハランもジンも、そのコスチューム似合わないね」 第一声が遠慮のないそれである。 「もう、はっきり言うなぁミレーユは」 「まぁ間違っちゃいねぇな」 ミレーユもジンと同じ頃からの気が知れた仲間だ。 ただ一つ、ハランを憂鬱にさせる相手でもあった。 彼女はハランのことが好きだった。 どこで恋愛感情を持たれたのかわからないが、ハランは何度もモーションをかけられ婚姻を迫られている。

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