39 / 138
第39話
「……あんたあの人の何?」
宗太は意外と冷静だった。和也の問いかけに宗太は同じく問いかけを被せてくる。
「おい後輩、もう少し分をわきまえろよ。こっちが聞いてるんだから答えろ。俺はお前が健人に何したんだって聞いてるんだ」
次第に辺りがざわざわと騒がしくなる。
一触即発かとも思われるような険悪で異様な雰囲気。
周囲のクラスメイト達が思い思いに勝手なことを口にする。
「姫の取り合い!?やべーじゃん」
「まじで。何、並木和也ナイト降格か!?」
「えーじゃあ次期ナイトに俺立候補しようかな」
「ばか、お前じゃ無理だろ」
そんな会話が健人の耳にも届き、健人は思わず立ち上がった。
自分がこの諍いの原因となっていると周囲にも知られてしまったことが居たたまれなさを膨張させる。
健人は足早に歩み寄り睨み合う宗太と和也の隙間にするっと入り込む。
頼りない身体がこんな時には役に立つもんだなと思って少し悲しくなった。
健人は和也の胸をやんわり押して宗太から少し距離を取らせた。
「和也ストップ。何してんだよ」
「いやだって健人怯えてたじゃねぇか。 黙ってコイツにお前を差し出すわけにはいかないよね?」
薄情者だと思っていた和也が本当は友達思いのいいヤツだと認識出来て健人は嬉しく思う。
思わず口許が緩んだ。
「大丈夫。ちょっと行ってくる」
根拠はない。何となく、こいつは多分大丈夫だとそう思っただけで。
それに周囲の目が自分たちに向いているのも健人には耐えられなかった。
健人は宗太の手を取り歩き出す。
引っ張られた宗太はくるっと振り返って和也に「べーっ」と舌を出して見せた。
「子供かっ!?」
和也の声が廊下に響き渡った。
ともだちにシェアしよう!