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第45話
「そうか。変なこと聞いて悪かったな」
「いえいえ、そういう事ならどちらかというと、あたしはケントよりもハランさんとお知り合いになりたいなぁなんて」
「え?」
「トガーひどい!俺には興味なし?」
トガーが笑う。
冗談だろうが、ケントとトガーがくっつくくらいならそれを阻止するために、トガーの気を引くくらいはやってしまいそうだ。
「あのさ、俺達釣りやったことないから道具とか持ってない。平気?」
「大丈夫だよ。俺のを貸すから」
「本当?ありがとう」
ケントとの会話の最中、トガーが小さく「あ」と声を出し、ハランもケントもトガーに顔を向ける。
「ごめんなさい。あたしちょっと落ちます」
「え、なんで?」
「急用ができちゃった。釣りは行きたかったんだけどまた今度。2人で楽しんできてね」
ハランとケントの会話をにこにこと聞いていたトガーが突然のログオフ。
その場で祈りのポーズを始めた。
「お疲れ様トガー、またね」
トガーは返事をする間もなく消えていった。
ケントは残念そうにしていたが、ハランにとっては都合が良い。
ハランはケントと2人きりになりたかったのだ。
「えっと……二人で行くの?」
「ん?誰か誘うか?」
「いやハランがいいならいいんだけど俺あまり面白い話とかできないし、ハランがつまらなかったら申し訳ないなぁなんて……」
ケントとの会話がぎこちない。
トガーがいなくなったからなのか。
自分とケントとの間には距離がある。
キングと呼ばれるようになり、一線引かれるのには慣れていた筈だが、ケントにそれをされるのは正直きつい。
「面白い話とか期待してないから大丈夫。それに俺はケントと二人で行きたい」
「……」
返事が返ってくるまでに少し間があった。ケントが何を考えているのかわからなかったが、自分がケントにとって迷惑な存在でなければいい。
「じゃあ、俺まだ弱いからお守りよろしくなハラン。よし、行こう」
嫌われているわけではなさそうでホッとした。
「あぁ。危険な場所は俺の後ろに居ればいい。船に乗るにはイジー草原より先にあるジャングルを抜けて港に出る。そこは危険なモンスターが多いから、馬に乗って行こう。馬に乗れば戦闘をせずに逃げ切れるから」
「馬!?馬に乗れるの!?俺乗ったことない!」
ハランの提案にケントは目を輝かせた。
そんなケントを見ているとこっちまで嬉しくなる。
ケントに一歩近付いたかとハランは微笑んだ。
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