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Lv.15筑波健人
久し振りにlostworldでハランと遊べた。
楽しかった、すごく楽しかった。
初めての地、初めての乗船。初めての海。
ハランの隣で初めての釣りをしながら色々なことを話した。
クエストのこと、レアなモンスターのこと、装備のこと。
キングという異名を持つlostworldの有名人ハラン。
その人の隣を占領できたことが、周りのプレイヤーに対して優越感を生む。
無意識に口がにんまりと弧を描いた。
「健人きもーい」
「え」
「思い出し笑いかよ!」
びしっと和也のチョップが健人の頭上に降りてきた。
「いてっ」
「何かいいことでも……あったか?」
健人は頭を押さえたままやっぱり顔はにんまりとしている。
「いやぁ、俺のやってるゲームなんだけどキングって呼ばれてるヘビーユーザーがいてさ。ちょっと高嶺の花的な遠い人だからなかなか交流できなくて。でも久し振りに昨夜遊べたんだよ」
「またゲームか」
「いいじゃないか。俺の楽しみが今はこれしかないんだからさ」
「まぁ趣味なんて人それぞれだろうけど。けど、姫のオンゲーオタクな実態を知ったらみんな驚くぞ」
「やめろよその姫ってやつ!ていうか最近ラブレターとか呼び出しとかないし。姫ブームは去ったんじゃないか」
和也は健人の額を指で軽く押した。
それが端から見ればカップルのイチャイチャに見えるとも知らずに。
「ほんと健人はアホだな。それはあの不良君達のおかげじゃないか。あいつらと昼飯を屋上で食べることが姫に気があるやつらの牽制になってる訳でしょ」
「う……」
健人は言葉に詰まる。
それはあながち間違ってはいないと自分でも感じる。
「でさ、健人はどう思っているわけ?原田のこと。少なくとも向こうは健人に興味があるみたいだよな」
「べ、別に、何も思わないけど」
原田という言葉を聞いた健人はみるみるうちに赤くなる。
何も思ってないとは言えない表情だ。
宗太のことを思い出すと、宗太とのキスに繋がって感触までリアルに思い出してしまいそうだった。
抵抗しなかった自分は一体何を考えていたんだろう。
色々思考を巡らせるが、やはり最後に脳裏に浮かぶのはあの綺麗な宗太の顔だった。
今度はそんな健人を見て和也がにやりと笑った。
「む、和也何笑ってんだよ」
「いや別に、何も」
こんなやり取りをした授業の合間の休み時間を経て授業が終わり、頭が痛くなりそうな昼休みはすぐにやってくる。
いつもの屋上。今日も秋晴れ、晴天である。
フェンスを背にして和也と健人が座る。
対面して神戸と宗太。
これがここ最近の昼食時の定位置だ。
「ほら」
ずいっと健人の前に差し出されたのは牛乳パック。
健人はそれを渋々受け取る。
「あんた、小さいんだからちゃんと飲めよ」
「う、うるさいっ!好きで小さいわけじゃないんだよ!もうすぐ成長期がくる予定だし!」
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