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第47話

強がる健人に宗太がぐいっと身体を寄せた。 どきっと心臓が跳ねた直後、宗太の整った顔が接近する。 「わぁっ、な、何」 「ふうん。じゃあんたはその小さい身体でまた言い寄られたらどうする?レスリング部じゃなけりゃ、男に勝てるとでも思ってんだ?」 「え、ちょっと、何だよ」 宗太が健人の細い手首を握りゆっくりとフェンスへ追い込む。 ガシャンと鈍い音を立てて健人の身体が押し付けられた。 心臓がどくどくと早鐘を打っている。 近い。吐息が、肌に触れている。 自分とは違う綺麗だけど男っぽい顔が更に近付き、鼻先を掠める。 ─キス、される……! 健人はそう思って思わずぎゅうっと目を瞑った。 「おい原田。健人泣かせたらもう屋上には来ないぞ」 和也の助け船で宗太の動きが止まった。それを見て神戸が笑っている。 「和也先輩ってマジナイトっすねー。イケメンだし。そのナイト役は原田に譲って、先輩は俺の姫になればいいんじゃねー?」 にやにやしながらそんな恐ろしい事を言う神戸。そんな神戸を悍ましいものでも見るように、和也は顔を歪めた後、目を細めて一瞥する。 自分は助かったが今度は和也が何だか危ない様子だ。 できることなら助けてやりたいが、健人は目の前を宗太に塞がれ動けない。 泣く泣く2人の同行を見守る他なかった。 「お前なぁ、冗談にしても笑えないぞ」 「そ、そうだそうだ!お前ら上級生揶揄って後で痛い目みても知らないからな!」 ぷっと宗太が目の前で噴き出したのがわかった。 ─この野郎……! 「いやいや。冗談じゃねぇって言ったらどうします?」 神戸は狙った獲物は逃さないと言わんばかりに和也への追撃の手を緩めない。 そればかりか神戸の手がオニギリを持つ和也の手に重なり、和也はハッと弾かれたようにそれを凝視した。 「え、……嘘でし……んむぐっ、んーっ、んーっっ???」 次の瞬間、神部は和也にキスをした。 健人をはじめ、宗太も目を丸くしそれを見て硬直している。 一番驚いているのは和也本人だろう。 そんな様を見て、唇を離した神戸は屋上のアスファルトの上で笑い転げた。 その傍らで真っ赤になって怒りながら唇をゴシゴシ擦る和也がいた。 気の毒だとは思ったが咄嗟のことで慰めの言葉が何も出てこず、健人は憐みの目で和也を見詰めるばかりだった。

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