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Lv.16原田宗太
神戸がやらかした。
小綺麗な顔した並木先輩とキスした神戸。常々神戸はバカだと思っていたが、やっぱりバカだと思った。
視線を健人に戻して、自分が神戸とまさか同じことをしようとしているのかと我に帰る。
ぎゅっと目を瞑って、それはまるで怯えている子犬のようでもあり、自分がいけないことをしているように思えて、宗太は静かに健人から離れた。
翌日から、健人と和也は屋上に姿を見せなくなった。
「はーっ、つまんね。並木先輩結構好みだったのによー」
「てめぇのせいだろうが」
長い宗太の脚が神戸の太腿を蹴飛ばす。
「いてっ。まぁあんな綺麗な奴が近くにいて何もしねぇなんてことがまずありえねぇ。俺はチャンスを逃したくない男なんだよ。で、原田はあのお姫様どうすんの」
「どうするって……どうもしねぇよ。そもそもあの人あれでも男だし」
そうなのだ。宗太は別に同性が好きなわけではない。
今まで付き合ってきたのももちろん全部女だし、今だって無意識に目で追うのは異性である女だ。
ただ問題なのは健人もその対象に入ってしまうということだった。
「ヤってみりゃ案外本当の気持ちってやつに気付くかもよ?」
「アホか」
神戸の言うことは最もかもしれないが、健人が日々怯える原因となっている性の捌け口に健人を利用しようとしている輩と一緒にはされたくないと思った。
健人に会えなくなってから、宗太はlostworldで執拗にケントを探した。
健人とは関係ないとはわかっていてもやっぱり似ている。
会えば甘やかして可愛がりたい。
それは宗太が健人にしてやりたい事そのものだった。
そんなハランの行動をミレーユが訝しんでいるとも知らないで。
学校へ行けば健人のいない昼休みの屋上。
ぽっかりと胸に穴が空いたような、何かが抜け落ちたような、今までにない虚無感に襲われた。
理由はわかっていた。
上を見上げ、ぼんやりと空を眺める。
「あぁ、そういえばよ……って聞いてるか、おい?」
「ん?あぁ」
やっと気付いた宗太の顔が神戸に向けられ る。
心ここにあらずな宗太を見て神戸は少しだけ反省の弁を口にした。
「悪かった。まさかアレか原因でこうなるとはな。お前が姫さんいなくなっただけでこんなに落ち込むとは思ってなかったからよ。でさぁ……」
神戸はちらりと宗太を見るが、宗太の視線はまた空の向こう。
しんとした一時の風がこれって嵐の前の何とかってやつか?と神戸の頭を過らせた。
「姫さん達が屋上来なくなってから、今が姫を落とすチャンスだって騒いでる奴らがいんだよ。同じクラスの黒川達。あいつら多分、姫さん狙ってる」
「……」
宗太の視線が一瞬揺らいだ。
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