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第49話

黒川という男を思い出す。 黒川は問題児扱いされている自分達の中でも異質というイメージだった。 悪いことは何も知らないようなそんな顔をしている至って普通の生徒だった。 だからこそどうしてこんな奴がこのクラスに?と疑問を抱く。 「黒川って、地味な感じのやつ?」 「あぁ。一見真面目そうだけどな。黒川製薬の息子で初等部からこの学校にいる。女、クスリ、暴力……色々黒い噂が絶えない奴だけど、金があるから全部親に揉み消してもらってるらしい。海外事業も展開してるらしいし儲かってんだろうし、ボンボンのおバカ坊っちゃんなんだろうよ」 「へぇ。黒川製薬ねぇ。そういやあそこの下痢止め飲んだことあるわ」 「下痢ーっ!?」 ぶはっと神戸が吹き出して、ゲラゲラと笑う。 黒川製薬と聞いて宗太の頭にパッと思い浮かんだのはその薬だった。 まあまあの効き目でそこそこ世話になったなと、そんな事を思い出した。 そうか、そんな黒い噂があるから同じクラスだったのかと今更ながらに気付く。 「同じクラスだったのには理由があったんだな」 「そりゃそうだろうよ。お前だって人のこと言えねぇ何かがあるだろ」 確かにないとは言わない。けれど。 「クスリはやってねぇ」 「まあ何にせよ用心した方がいいと思うけどな。並木先輩も巻き込まれそうならそっちは俺が守らせてもらうわ」 「……おぅ」 女、クスリ、暴力。 短い黒髪で制服をぴしっと着用した黒川の真面目そうな外見からは結びつかないことばかりだ。 「つーか。どいつもこいつも姫、姫って。姫なんて呼ばれてる人の身にもなれよな。男子校はホモの巣窟かよ、気持ち悪ぃ」 「ぎゃはははっ!原田も人のこと言えねぇべ!」 「うるせぇ」 いつもだったら癪に障る神戸の言動も受け流してしまえる程、宗太は黒川の存在が気になり始めていた。

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