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第55話

送信を押す指が震える。 健人にとって宗太という存在は怖いだけではなく頼もしくもあり、ただそれだけでなく……。 ─なんでこんなにドキドキすんだよ。たかがメッセージ一つで……。 まるで宗太に振り回されているようでそんな自分が嫌になる。 健人はぎゅっと目を瞑って送信ボタンをタップした。 返事は何故か授業中に返ってきた。 スラックスのポケットでスマホのバイブが震える。 どこかでサボっているのだろうか。 着信はあれど授業中にスマホを見ることは出来ず、休み時間になってから返信を確認した。 『昼飯食いに屋上来いよ』 返信はこれだけだった。 だがこの一文で宗太が屋上で待っているのがわかる。 昼休み。 健人は和也にばかり頼っているのもよくないし、宗太がいるのだから大丈夫だと自分自身に言い聞かせ席を立った。 「和也、俺屋上一人で行ってみるよ」 「そう?そうしてもらえると俺もありがたい。……けど」 和也が心配そうな顔をしている。 健人があの一年の中に入るということは、狼の群れに子羊を放すようなものだとでも思っているみたいだ。 「やっぱり俺も行こうかな。ミーティングは腹痛で出れなかったって仮病使ってもいいしさ」 「え、いいの?」 和也がどうしようと悩んでいると、教室の入り口に派手な赤い髪をした長身の生徒が現れ大声で和也を呼んだ。 「並木先ぱーい!」 「う、わ……!あいつ何しにきたー……」 和也の頭痛の種、一年の神戸だった。 和也は額に手をやり肩を落とす。 「先日はすいませんっしたー!今日は屋上で待ってまーす!」 大きな通る声で一息に言うと神戸は台風のように去って行った。 「ああ……先手打たれたね」 これでは屋上へ行くしかない。 「なんなのあいつ。行かなきゃ後が怖いじゃないか……」 和也はがっくりうなだれた。

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