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Lv.20原田宗太

正直少し驚いた。 まさか健人の方から連絡をくれるなんて。 何か余程の事情があるのかもしれない。 もしそうであれば健人の力になりたいと純粋に思う。 健人が頼るのはいつも和也だ。 それは宗太から見て少し依存に近いものがあると思っていた。 依存でも何でもいい。 自分を頼って、縋りつけばいい。 もうすぐ会える。 神戸がやらかした和也とのキスが屋上で過ごせる唯一の一時を奪ったのは間違いなく、健人が次に姿を見せる時は和也と一緒だろうと想像できた。 4限が終わる少し前に教室を出て、殺伐とした購買でのパン争奪戦を避けるため、他の生徒より一足先にパンを買う。 ついでに自販機で健人の牛乳を買い屋上へ向かった。 わくわくしている自分がいた。 宗太にとって健人はやはり特別な存在だ。 もう自覚せざるを得ない気持ちがある筈だが、今一つ、それが何なのか確証が持てない。 隣にはバカをやらかした神戸が座る。 「並木先輩にはちゃんと謝ったし万事オッケーだろ」 「神戸、お前大体何でキスなんかしたんだよ」 思わず聞きたくなってしまう。 和也は爽やかで清潔感があり好感が持てる。 だが男前な顔付きで体格もそれなりに良い。 守ってやりたくなる健人とは見た目から大違いである。 「俺さ実はどっちでもいけんだよね。バイってやつ?並木先輩は近くで見ると綺麗な顔してるし体は締まってるし、男女の垣根は感じないんだよな。まぁあんだけ整ってると裸にしてみたいと思うわけよ」 「へぇ……わかんねぇな」 「そういうお前はどうなんだよ。好きなんだろ筑波先輩。すげぇ可愛くてちょっと見、性別不明だけど」 「……裸に剥いたとしても勃つのかわかんねぇし、恋愛対象として好きなのかもよくわかんねぇ」 「おい!物騒な会話すんな」 未だ声変わりが訪れていないかのような中性的な声が響く。 宗太と神戸が声の方に目をやると二人が待ちかねていた健人と和也の姿があった。 「聞かれてたんか」 げーっと神戸が肩をすくめた。 「言っておくけど、健人は今現在俺の姫だから。そこお忘れなく。あ、そうそう。因みに俺彼女持ちだから。そこんとこもお忘れなく!」 そう言って和也がずいっと健人の一歩前に出る。 「ただ、場合によっては原田に俺のナイトの称号を譲ってやってもいいと思ってる」 「は!?和也なに勝手なこと言ってんだよっ」 今度は健人が和也の腕を引っ張った。 ─ナイトの称号か。 lostworldではキングと呼ばれ、リアルはナイトと呼称されるのも悪くない。 「おもしれぇ」 宗太は立ち上がり和也の前に立つ。 和也が一瞬たじろぐのがわかって意地悪く笑ってみせた。 「そのナイトの称号はどうすりゃもらえんの?」 まさかこんな面白い展開が待っていようとは。 健人は口をポカンと開けて宗太と和也を交互に見ている。 「そうだな。まず健人に手を出さない。そして健人が困っている時は無償で手助けしてやる。即ち、まずは友達になるということだ」 「は……?」 ─友達だ? まさかそんな条件を出されるとは思わなかった。 意表をつかれた宗太は暫し言葉を失った。

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