61 / 138
Lv.22ケント
学校から帰宅して早々に宿題を済ませ風呂に入り、夕食が出来るまでの間にPCを起動させてlostworldにログインする。
フレンドリストを確認すると、ハランは既にインしていた。
ケントはハランと話がしたくてチャットメッセージを送った。
『ハランお疲れ(^_^)/』
『お疲れ』
『今話してもいい?』
『ん、なに?』
『昨日もらった手紙の話』
『あぁ』
『結局何となく流れで一緒に勉強会することになっちゃった( ・_・;)』
「……取り込み中かな。返事が来ないや。それとも俺何かしたか」
ハランからの返事がない。それに何だか返事が素っ気なくいつもと違う。
健人はハランの文面からほんの少しの刺々しさを感じて、何か嫌われるようなことでもしたのかと思い返してみる。だが心当たりはない。
もしかしたら戦闘中なのに返事してくれてるのかもしれない。
だから素っ気ないのかもしれないとそんな風にも考えた。
『ごめん。忙しいみたいだからまた今度にするね。俺明日からテスト勉強でイン出来ないんだ。テスト終わったらまた遊んで』
返事を待つ少しの間。そんな間さえも自分が嫌われたのではというマイナス要素となり、健人を不安にさせ た。
『だりーけど俺も明日からテスト勉強。図書室でな』
間を置いたハランからの返事は意外なものだった。それを聞いて本当にハランも自分と同じ高校生なんだなぁと思う。
現実のハランはどんな人なんだろう。
『俺も図書室で勉強なんだ。一緒だね!お互い頑張ろ』
『あぁ』
やはりいつもより素っ気ない返事。気になったと同時に不安が押し寄せる。
不機嫌の原因が知りたくて、更に話しかける。
『ハラン』
『なに』
『ハランに会いたい。だめ?』
また暫くの間が空いた。
これはだめだということなのだろうか。
ミレーユから忠告された言葉を思い出した。自分はもしかしたらハランの重荷になっているのかもしれない。wantedのリーダーであるし、身につけているものも違えばゲームの進行の度合いだって全然違う。
他のプレイヤーから見てもハランは憧れの存在で雲の上の人だ。
そんな人と親しくしてること自体間違いなのかもしれない。
だとしたら。突き放される前に、自分から離れた方がいいのか?
返事が来ないうちに更にハランにメッセージを送る。
『ごめんハラン無理言って。会えなくても話が出来たからいいや』
……本当はハランに会いたい。
なんでこんな気持ちになるんだろう。友達と仲違いしたような感覚だ。
それ以前に自分がハランに憧れを抱き、その気持ちがハランに伝わって避けられているのだろうか。
「……俺、ハランのこと結構好きだったんだなぁ」
まるで失恋でもしたかのようにハランに思いを馳せていると、ハランからのメッセージが届いた。
***************
「ケント、後ろ」
「え、後ろ?あ……!」
ケントが振り向くと、いつの間にかハランはケントの真後ろに立っていた。
「ハラン!!」
ケントは思わずハランの胸に飛び込んだ。
抱き着いて、ハランの胸に頬を寄せる。
ハランが抱き返してくれるのが、すごく嬉しかった。
ともだちにシェアしよう!