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Lv.24筑波健人

家に帰ればゲーム三昧だった自分を少し反省している。 決して裕福ではない、ごく一般的なサラリーマンである父と、パートで家計を支える母、そして大学に通いながら一人暮らしをする兄。 そんなごくごく普通の一般家庭が背伸びして健人をこの学園へ入れてくれた。 テスト勉強くらいは真面目にやらないとダメだろうとさすがに思う。 ちゃんと取り組む機会を作ってくれた黒川に健人は少しだけ感謝した。 「もしわかんないところあったら一応聞いて。もしかしたら答えられるかもしんないし……」 「はい、ありがとうございます。筑波先輩」 にっこり微笑む黒川には毒気みたいなものが全く感じられず、健人もつられて微笑んだ。 教科書にテキスト、参考書、色々広げて復習する。 ここで一踏ん張りすればまた晴れて自由の身だ。 黙々と黒川と向かい合わせで勉強した。 健人の眼には黒川は真面目にただ勉強しているようにしか見えない。 もう健人の警戒すべき相手では無くなっていた。 ─これ何て読むんだっけ? 漢文って何の役に立つのだろう。 じっと漢字ばかり眺めていると字その物が変な物に見えてくる。 ゲシュタルト崩壊しまくりだ。 ついでに眠気も襲ってきて視界が揺らぐ。 「先輩、眠いんですか」 「うん……だめだ、ちょっと寝てもいい?」 健人の言葉に黒川がくすくすと笑う。 「いいですよ、ほんと、先輩可愛いなぁ」 「先輩に可愛いは失礼だろ。ってことでちょっとだけ、おやすみ」 「図書室閉まる前に起きてくださいね」 「ん……」 強烈な睡魔には勝てず目蓋を閉じた。 少し眠って頭をリセットすればまた勉強する気になるだろう。 どれくらい眠ってしまったのか。 意識が浮上した時には窓の外は真っ暗だった。 健人は散らかった教材をぼうっと眺める。 試験勉強の途中で眠ってしまったのだ。 今更ながらそんな事を思い出し、辺りを見回した。 「先輩、おはようございます」 目の前で黒川が笑っている。 この図書室に今居るのは、健人と黒川だけだ。 「おはよう……って、今何時?」 「7時過ぎましたね」 「もう図書室の利用時間終わってるじゃないか」 「ですね。でも係の人が、先輩寝てるの見て戸締まりしてくれるなら最後まで使っててもいいよって」 黒川の人差し指に引っかかっている鍵は図書室のものだった。 「そうだったんだ。なんかごめん。急いで帰ろう」 「まぁまぁ先輩、そう慌てなくてもちゃんと戸締まりだけすれば大丈夫ですよ」 辺りが暗いせいか、黒川の印象も少し違って見える。

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